「次の世界…着いた…?」

名前が目を擦りゆっくりと開いてみると、そこには生い茂った沢山の木々が広がっていた。

「着いたねー。今のところ人の気配は無いかなー」
「そっか…。サクラはまだ寝てるの?」
「はい。姫はまだ」
「じゃあさー、取り敢えずー、此処にいても仕方ないからオレらは探索といこうかー」
「あぁ、それがいいな」

木により掛かっていた黒鋼はパッと体をお越しそう言った。
何処か不機嫌な様子が窺える。

「モコナも行くのー!」
「てめぇは足手まといになるだろ!!」
「そういってー、黒鋼ほんとはモコナがいないと寂しいくせにー」
「んなわけあるか!!」
「モコナ、一緒に行こう。小狼君はサクラを見てて」
「はい、気を付けて」
「じゃあ、しゅっぱーつ!」

ファイに続き、名前とモコナもずんずんと前へ進んでいく。
黒鋼は「めんどくせー」と言いながらダルそうに歩いて行った。

そんな4人の温度差に、思わず小狼は笑みを溢す。

「サクラ姫…」

寝ているサクラの表情は、どこか幸せそうだった…







「いーけないんだ〜いけないんだ〜。乙女の心をふみにじり〜」
「モコナ、歌上手だねぇ」
「踊りもばっちりだよ〜」
「けっ。俺は本当のこと言ったんだ」
「本当のこと!?黒鋼サイテー!!本当のことでも言って良いことと悪いことがあるのよ知らないの!?」

…実は数分前。
名前が木の根に躓いた時、(それもかなり大胆に)咄嗟に黒鋼が手を差し出し「大丈夫か?」と珍しく気を遣ってくれたのだ。

しかし名前の手を引いた瞬間、「お前、前に持ち上げた時より重くなってねーか?」と疑問形で口にしたのである。

「黒さまー、それは言っちゃいけないよー。黒さま力持ちなんだから名前ちゃんなんて軽い軽い」
「うわー、黒鋼ひどーい!モコナ、名前の気持ち凄くよく分かるよ?」

悲しそうな目で名前を見るモコナの目が、彼女には直視出来なかったという。
同情されるのは特に気にかけなかったのだが、モコナに言われても何の説得力もなく、ただ「ありがとうモコナ…」と苦笑することしかできなかった。

「でもさ、黒鋼不機嫌だよね。いやほら、黒るんはいつも近寄り難い雰囲気出てるからあまり変わんないけど、いつもの二割増しって感じ?」

ここぞとばかりに反撃をする名前にぎろっと黒鋼は睨み付ける。
「きゃーこわぁーい」と三人はお互いに抱き着いた。

「でもたしかに。せっかく楽しく新しい国を探索してるのに不機嫌だねぇ、黒ちゅうは」

ぎろ、と今度はファイを睨み付ける黒鋼。
言わずもがな、三人の反応は先程と何も変わらない。

「星史郎さんとの戦い途中になっちゃったからー?」
「あ、図星っぽい」
「…ったくあの魔女、何考えてんだよ。勝負の邪魔しやがって」
「その後もなんだか慌ただしく移動しちゃったしねぇ」
「うーん?モコナ、その時のこと覚えてない」
「でも、そのおかげで小狼君も黒ろんも剣が手に入ったしー。遊戯(ゲーム)世界が現実に戻るちょうど境目のいい具合に戻りきってないところでモコナの口に吸い込まれたからねぇ。けど、次元の魔女さんは何でこれ、送って来たんだろうねぇ。…あ、何かついてるー」
「侑子からのお手紙だ!!」

黒鋼と星史郎が対峙している最中に落ちてきた板に付いている紙をファイは手に取り広げた。

[ホワイトデーは倍返し。遅れたら罰は三倍返し 侑子]

「だって」
「意味分かんねぇぞ!!」
「私これ読めなーい」
「オレも読めないー」

あははーと二人で踊っていると、ガサガサと草陰から物音がした。
振り返ってみると、縄に絡まるサクラがなんとかそこから潜り抜けようと試行錯誤している。

「サクラ!!」
「名前さん!!」
「どうしたの?」
「小狼君が浚われたんです!!」



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