俺が君を支えてやるんだ。


〜力になれるのなら〜


今まで、生きた心地がしなかった。
ギルドに入って毎日はとても幸せだったし、楽しくて充実した毎日だった。なのに、この足さえ動けばもっともっと毎日は明るくて輝いて見えるのかもしれないとずっと心の片隅で思い詰めていた。勿論誰にも言えぬまま…。


「グレイ?…おい、どうした?」
「ぇ、いや?」
「何だよ、らしくねーなぁ。」


周りの仲間達はたくさん心配してくれるし、それはとても温かい。不自由な身体に生まれて優しくされるのは初めはどうかと思っていたが、今はかなり助かっている。
たとえそれが"同情"と言う言葉の塊であるのだとしても。


「…ごめんな。」
「はぁ?何言い出すんだよ、急に。」
「だってさ、この足さえ動けば俺はお前の隣を歩けるって言うのにって思うとよぉ。なんか、俺って惨めだなって…っ。」


泣いたってどうにもならないこの足に、『動け動け』と言うばかりに涙の水滴がポタリポタリと落ちては消える。


「惨めとか、そんなの関係ないだろ…。」
「ナツ?」
「お前はいつも俺の隣で歩いてるだろっつってんだ!」


まさかそんな事言われるなんて思ってもみなかったから、目を見開く。


「俺の足じゃないのに、か?」
「お前の足だろ!?」
「…は、はぁ?」
「確かに車椅子はお前のもんじゃないかもだけどな、お前の身体の一部だろ。お前と生きてきたお前の足なんだろ!」


動けない俺を外へと連れ出したのも、人の温かさを教えてくれたのも、全部が全部この"車椅子(あし)"があったから。


「お前の足だよ、それ。」
「…おぉ。」
「グレイが歩いて俺の横に、ここまで来たんだ。」
「…っ、おぅ!」


また頬に伝うものを感じた。溢れては零れて、零れれば溢れて、ますます膝が濡れて行く。
なのに、それなのにこの温かいものは何なんだろうか。胸の中に込み上げてくる熱いものは何なんだろうか。


「またどっか行こうな!」
「あぁ。」
「俺、お前とならどこでも行けるぜ!」
「えっ?………やっぱ馬鹿だな。」


嬉しかった。
正直、本当に嬉しかったんだ。
この熱さが何なのか今、分かった気がする。
きっとこれは――。










"好き"と言う有りのままの気持ちであって、確かにこの愛は彼へ抱いた感情なんだとはっきり分かった。










「好きだな、俺。」
「何か言った?」
「俺、ナツが好きなんだなって思ったんだよ。…ただ、それだけだ。」


キュッ、と車椅子の歯車と床とがスリップして音を奏でる。動き出す車輪は直ぐに彼によって止められた。


「聞いてから、動けよ。」
「聞けるか馬鹿!恥ずかしい…。」
「――返事くらい言わせろよ。」


ナツの手が俺の手に重ねられ、ぎゅっと優しく握られる。
声をあげようとナツの顔を見返せば、愛しいものを見るあの切ない瞳が俺と重なった。


動けない。


こんなの、彼が卑怯だろ…。


「俺はお前を愛してる。」
「馬鹿恥ずかしいことをさらっと言いやがって!」
「だから俺にグレイを預けろよ。」
「何だよグレイを預けろよってのは。」
「だって俺達二人で一つだろーが!」












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