やばいよ!白石くん

! log、キモいよ!白石くん続編


それは何気ない1日の、帰路につく途中の出来事だった。今日から一週間はテスト期間のため昼の時間と午後授業、それから部活動の時間を全て取っ払って生徒は皆家に帰らされる。全校生徒が同じタイミングで下校するためいつもより帰宅路は混み合っている。いつもの帰り道を歩きながら、歩道を歩く生徒の間を縫って何台ものチャリが追い抜かして行くのをあぶねーなと思いながらも、腹の虫がなきそうなことに気がついてコンビニでも寄るかぁとぼんやりとそんなことを考えていた。


「にしてもチャリないの不便だな…」

今朝、いつも通り登校しようとチャリに跨り数回ペダルを踏んでから気がついてしまった。異様に進まない上に妙な音がする。嫌な予感にブレーキをかけ、タイヤを確認すれば案の定前輪はパカパカとタイヤらしからぬがばがばの弾力でつまりはパンクをしていた。
大方近所の悪ガキのイタズラか、昨日の帰りに釘でも踏んでしまったか。どちらにせよこれでは登校できない、とチャリを止めて急ぎ足で近くのバス停に向かったのは記憶に新しかった。
帰ったらチャリンコ屋行って修理しなくちゃなぁ。テスト期間と言えど元より勉強する気などさらさら無かったのでそれ自体は問題はないが、何しろチャリンコ屋までパンクした自転車を押して歩かなきゃいけないのがまた面倒くさい。確か歩きで20分はかかるぞ。

「あれ、佐藤やん。今日は歩きなん?」

「ん?忍足、…と白石」

不意に肩に手を置かれ、振り向けばそこにいたのは同じクラスの忍足。と、白石だった。
よお、と手をひらひらとさせる忍足の後ろでニコニコ笑う白石に血の気が引いていく気がした。

あの日の出来事から1ヶ月。あの日の全てはまるで夢だったかのように今は平和な毎日を送っている。
あの日のことは誰にも話してないし、白石も今まで通り何も変わらない。変わったことといえば俺が異様に白石を避けるようになったくらいだろうか。
元々たまに話す程度の仲だったのもあってそこまで露骨な避け方はしていないし、むしろ他言しないだけありがたいと思って欲しいものだ。人の秘密をペラペラ話すような趣味はないがあれは白石にとって、学校のやつらにバレたら割とやばい事だと思う。まあ例え誰かに話そうとも誰も信じやしないだろうが。あの白石が変態ホモ、だなんて。

「何固まってんねん、チャリどないしたん?」

「あ、ああ。パンクしてて、今日はバスなんだよ」

怪訝そうな顔をする忍足に慌てて取り繕うように説明をする。そうすればさして気にも留めないような返事をする忍足に乾いた笑みを浮かべて歩みを止めていた足を動かしはじめた。

「2人は歩き?」

「俺も謙也もバスやで」

「せや!なら一緒にかえろーや、途中までみんな一緒やろ」

ぎくりとする。まあ、この流れはそうなるよな。
だらだらと嫌な汗をかきながら、うーんだとかあー、だとかパッとしない声を上げてごまかす。
いやこれ不可避イベントでは?どうやっても逃げられないやつでは?キラキラと輝く瞳で俺を見つめる忍足と不自然なまでに笑顔の白石に、俺は例えうまく笑えていなかろうが目線が泳いでいようが、どうしてもノーとはいえなかった。






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