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「やばい、化粧が・・・」
「せやから言ったやん。凪、自分が動物ものに弱いんわかっとる?」
「わかってるから今まで避けてきたんだよ、まさか蔵ノ介のティッシュに救われる日がくるなんて・・・」

ずず、と鼻水をすする。泣いた後特有の水のようにさらさらの鼻水はなかなか厄介である。ラストシーンは何度思い出しても泣けてくる。なぜ人と動物が一緒に生きていくことができないのか、許されないのか。今この時代に生きるすべての人間と動物に幸あれ、と滲む涙を拭いながら思いにふけった。

「号泣しすぎやろ」
「あの映画で泣かないなんて。冷徹人間め、ロボットめ」
「いやあ感動したなあ、危うく俺も人間やったら泣いてたわ」

帰り道、大きな歩道橋を渡りながら私と蔵ノ介は並んで歩く。
太陽は沈みかけていて、夕焼けが空いっぱいに広がり歩く私たちをオレンジに照らしていた。少し前を歩く二人の影はまるで恋人のように手を繋いでいる。もうすぐ家につく。

「今日が終わってまうなあ」
「1日あっという間だったね、早かったな」
「・・・せやな」

言葉数は少ない。話す時間さえも惜しむように、繋がれた手はぎゅと強く握られる。沈黙の中考えることは今日一日の事と、蔵ノ介のことで。きっと蔵ノ介も私と同じように今日を振り返っているのだろう。心地よい沈黙にふと夕焼けに染まる空を見上げた。
謙也との時間はあまり楽しいものではなかった、お互い考えていることがバラバラでお互いの時間を大切にしていて、といえば聞こえはいいが、言ってしまえばただ同じ空間にいるだけ。居心地は悪くないし今までは一緒にいれるだけでいいと信じて疑いもせずにいた。けれど、もしもそれが間違っていると、何か足りないと気がついてしまったら?私たちの関係はどうなってしまうの?もう、今までの関係で満足できるの?

「なあ、凪。ちょっとええ?」
「どうしたの?家までもう少しだけど、」
「ええから」

歩みを止め、夕焼けをバックにわたしを見つめる蔵ノ介に心臓が跳ねる。その姿は夕焼けに照らされ赤くぼやけていて。いまにも消えてしまいそうな儚さがあって、男子高校生に儚さってなにそれと口をつぐむ。こんな嘘みたいに綺麗な顔した人がわたしの幼馴染で、わたしのことを好きだなんてそんなことありえるの。まるで夢を見ているかのようなふわふわした心地に反して心臓は煩く高鳴っていた。

「いま、凪はなに考えてる?おしえて」
「なに、って…」
「俺はな、他のこと何も考えられんくらい凪のことでいっぱいや。考えるとか、思うとか、そういうんちゃうくてほんまにいっぱいいっぱいやねん」

今日を、この時間を終わらせたくなくて仕方ないねん。続けてそういう蔵ノ介に顔に熱が集まっていく。なんて直球な言葉。聞いているこちらが赤面してしまうほどキザったらしいセリフも、それを大真面目な顔をして言う蔵ノ介も全てが私の胸をきつく締め付けた。

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