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赤く染まった空を見上げハア、と一人息を吐きだす。
片手には充電の切れそうなスマホ。先ほど届いたメールは随分そっけないものだった。

"今日一緒に帰りませんか"

シンプルな誘い文句に一人教室で悶絶したのは秘密である。

お互い委員会や部活があるため一緒に帰宅する事は極めて困難なのだ。まだほんの数回しか一緒に帰ったことの無い私にとって、財前くんからのこういった急なお誘いはまるでサプライズをされているかのようにワクワクドキドキなのである。恋をすると人は語彙力がなくなるとは言うがそれは本当だったらしい、なんたってワクワクドキドキだから。


「先輩」
「財前くん!」

そんな感じで一人校門の前でワクワクドキドキすること5分。遠くの方から聞こえた呼び声にはっとして振り返れば、財前くんが慌てたように走ってこちらに向かってきていた。

「遅くなってすんません。担任に面倒事押し付けられてしもうて、待ちました?」
「大丈夫、そんなに待ってないよ!それにしても災難だったねえ」
「ほんまに、はよ先輩に会いたかったんに、予想してなかったとこで足止め食らってしもうた」

そっぽを向いてそう呟くように言う財前くんに目が奪われた。
なに、今の、不意打ち。少し照れたように目を合わせてくれない財前くんの横顔を見ているうちに、徐々に顔に熱が集まっていくのを感じて咄嗟に俯く。
財前くんにこんな真っ赤な顔なんて見せれない、てかそもそもなに今の発言、私をどうしたいの?!頭の中では混乱しながらもそれを表に出さないようぐっとの飲み込んで顔を上げ、帰ろっか。と笑った。

「でもさ、中々こうやって一緒に帰れないからいいよね、たまに一緒に並んで帰れるの」
「そっすね、俺は本当は毎日でも一緒に帰りたいっすけど」
「……ず、ずるいなぁ」





他愛ない話をしながら二人ならんで歩く。なんだかぎこちないのは
夕焼けのせいで縦に伸びた影が私と財前君の距離を現していて、

「アオ先輩。」

不意に名前を呼ばれる。
隣を歩く財前くんを見上げれば優しく微笑んでいて。一体何事かと目を見開き、頬に熱が集まる。財前くんってこんなに優しく笑えるんだ。
偶然か、はたまた故意か。財前くんの指先が私の手に触れた。私の冷たい指先とは違って温かい財前くんの指先に口を閉じた。

「・・・帰りましょか」
「・・・うん、」

ゆっくりの歩調。
後ろから追い越していく後輩の集団や、カップルの背を見つめながら、傍から見たら私達はどんな風に映ってるのかな、なんて考える。
ふと視線を落とした地面に映る影は繋がっていて、影が示す少し遠い距離がもどかしく手と手を繋いでいた。