朝は苦手だ。それは祐希も一緒。でも同じベッドで寝ていても必ず早く起床するのは私の方。と言っても好きでそうしている訳ではない。重い瞼をどうにかこじ開け、隣でまだスヤスヤと眠る祐希を見ると癒されるというより若干苛立ちが募ってくるのでさっさと洗面所に行く。

 一通り済ませると向かうはキッチンへ。まずポットにお湯を沸かし、冷蔵庫の中身を見る。まぁ大体いつも決まった朝食ではあるが、一応の確認だ。卵を3つ手に取り軽くオムレツ風に。トースターに食パンを2枚セットし、その間にサラダを用意する。ザクリザクリと包丁を動かす頃、少し前に起きてYシャツとネクタイというスーツ姿へと着替えた祐希がお出ましだ。

「おはよう祐希」
「おはよ……。あー、なまえエプロンのリボン取れてる」
「え、本当? 直して」
「……うっそー。リボンなんか取れてません」
「何よソレ」

 いつも祐希は背後から私の腰に腕を回し、なまえの匂い落ち着くー、とか言って首筋辺りに顔を埋め、暫くそのままの姿勢で動かないのだ。今日も、なまえいい匂い、と言いながら私の食事の用意のペースを遅らせる。

「あー会社なんて行きたくないー。なまえとずっとこうしてるー」
「それは困ります。しっかり働いて来てくださいな、大黒柱さん」
「むー……」
「しっかりお勤めを果たして帰って来たら、続きはいくらでもしますから」
「本当? じゃあ約束のチュー」
「もう……」

 これだからまた明日もあなたより早く起きちゃうんだよ。だから家のことは私に任せて、いってらっしゃい旦那さま。







ただそれだけのこと/15万打企画
りつさんリクエスト
(130423)

BACK
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -