平介って、私と付き合うのは面倒くさくないの? レンアイって面倒くさそうねーとか言いそうなのに。
「あー、それは今のところ大丈夫」
「ならよかった」
そんな私たちの会話を聞いていた鈴木が、お前らの会話おかしいぞ? とか言ってるけど、私たちは何らおかしいとは思ってないんだから別にいいんじゃない?
「彼女ができた時点で平介にとっちゃ大きな進歩」
「あー、そーかもねぇ」
「それを面倒だと思わなかったことに私は感謝しなきゃいけないのだ」
「だってなまえおれのこと大好きだもんねぇ」
「うん」
お前ら恥ずかしい、ってまた鈴木が口を挟んだ。恥ずかしいなら聞かなきゃいいのに。
「まぁ、早い話なまえじゃないと何の意味もないっていうかね」
「わかってるじゃん」
「おれなまえに出会えて良かったなァ。……って一応言っとこう」
「なにそれ嬉しいよ」
なんなんだよその熟年感、って鈴木に突っ込まれる。甘酸っぱい恋とか刺激的な恋とかそんなのは私達には必要ないんだよ。いるのはお互いへの信頼だけ。
なんて格好いいこと言ってみるも、本当はただこんな変わり種の自分達に合うのがお互いだったってだけで。無神経でゆるくて気の利いた事も言えないような平介には、女子高生らしいキャピキャピ感や可愛げもない私が気を遣わずに一緒にいられる唯一の相手だし、格好良くて背が高くてスポーツできて爽やかで……とかそんなくだらない理想像なんか掲げない私には、ただのんびりまったりド級のマイペースな平介が本能的に好きだし、そういう関係だからこそうまく言ってるのだと私は勝手に思ってる。
「平介だから私も面倒くさくないよ」
「居心地がいいのかねー」
「そうなのかも」
「でもたまになまえのことお母さんに思えてくる」
「私はペット」
「えぇー、それはヒドい」
「だって平介よしよししたくなる」
「おれは時々なまえに全力でついて行きたくなる」
なに、お前らって主従関係なの? って鈴木が。
「違うよ。あえて言うなら依存関係だよ」
ああそう、ライトに見えて実は結構重かったんだな。ってまた鈴木が。
さっきから一々口を挟んでくる鈴木が割とウザかったんだけど、お前らもう結婚しろよ、って言った鈴木はナイスだったと思う。
「なるほど、それいいね」
「うん、いいんでない」
きっとこれからもこんな感じなんだろう。特に異論はない。
ただただこうしていたいだけ
(130714)
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