薔 薇 色 の 地 獄 。 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -





君とのスキマ【後編】




「ずるいじゃないか!!」

太宰がそう言うと、彼女は眉間に皺を寄せて
あからさまに嫌そうな顔をした。

「…何の話だ、太宰さん」
「この間、織田作に言われたんだ。
『なまえは抱き締めても折れないから安心しろ』って!」
「……、ああ」

あのときのことか、となまえは思い出す。
太宰の冗談を真面目に受け止め、そして実行した織田作。

これは安吾もさぞや苦労しているのだろう、
となまえは彼の人に少しばかり同情した。

「確かに私はなまえは抱き締めたら折れそうなほど細いとは言ったけれど、
本当に抱き締めるなんて思いもしなかった!
織田作ずるい!羨ましい!!
という事で、なまえ、私にも君の抱き心地を確認させてくれたまえ」
「嫌だ」
「秒速で否定された!
だがなまえ、私がそんな一言で諦めるとでも思ったかい!」
「貴方の諦めの悪さはわたしも買っているよ。
だが抱き締めてほしくは無いな。王様が嫌がる」

触れればあらゆる異能を無効にする異能。
なまえの異能、『夜の王』も例外ではなく、
太宰が触れれば王様も消えてしまう。

「そう、あの強靭な防御力を誇り、
なまえに対しては異常なほど過保護な王様でも
私の異能『人間失格』には敵わないのだよ。
諦めて抱き締めさせておくれよ、なまえ」

「そうか、なら……どうぞ」
「、はい?」

なまえは両手を広げ、いわゆる受け入れる体勢でいた。
はい、と言うと、珍しく太宰の目がまるくなる。

「…なまえ、どうぞ、とは」
「これを以て金輪際わたしの身体に指先ひとつ触れないと約束してくれるなら」
「条件が厳しい!いいじゃあないか、触れるくらいは!」
「王様が消えるのは嫌なんだよ、太宰さん」

太宰の動きがきしりと止まる。
恐らく、今まで出会った誰にでもその表情をしたことはないのだろうと思うくらいの、
慈愛に満ちた微笑み。

(なまえは無自覚すぎる。あれでは、)


太宰は目を伏せ、そしてにこりと胡散臭い笑みを貼り付けた。

「なら、遠慮しておくよ。
これから先に、なまえに触れられないなど悲しくて自殺してしまいそうだからね!」
「…貴方はいつでも自死しかけているじゃないか」

呆れるな、と続けるなまえ。
彼はまた笑うと、なまえの柔らかい黒髪にそっと触れた。

「だざ、」
「いいじゃないか、少しくらいは」


たっぷりの沈黙のあと、



今日だけだ。

と、なまえが呟いた気がした。


-----------------

ハグの日に上げようとしていた。

していたんです…。


----------------------