暁に燃ゆ【2】
扉。
その言葉に、ウェイターの表情が変わった。
「…お答え致しかねます」
ふと、中也に影が落ちる。
見上げると、SPがひとり、ふたり、さんにん。
「……ハ、」
鼻で笑うと、中也はひらりと拳をかわし、
ぽん、とSPに触れれば、それでおしまい。
「邪魔だ」
中也の異能。重力。
あっという間に潰れてゆく。
「…もう一度聞く。あの扉は、何だ?」
***
扉の先は、薄暗い部屋だった。
申し訳程度の灯り。
ウェイターの表情は、暗かった。
「この先に何がある」
「……、それ、は」
広い空間があった。
中也は、部屋の奥に鉄格子を見た。
「……、檻?」
暗くて奥が見えない。
中也は、ゆるりとその檻に近づいた、
が。
背筋を駆け抜けた悪寒を振り払うように。
中也は鉄格子に触れようとした手を即座に引いた。
なにか、いる。
「…オイ、なんだありゃ」
「…………、…」
「答えろ」
みしり、とウェイターの足元に重力がかかる。
じわじわと押し付けられそうに軋む骨の音に、ウェイターは、悲鳴をあげた。
鉄格子の間から、『黒い何か』が蠢いていた。
それはまるで中也を誘うように、ぞわりと。
「…異能力者、か?」
「そうよ」
背後から聞こえたその声に反応するように、
一斉に部屋の灯りがともされた。
眩しさに、中也の目がくらむ。
「オーナー…」
館の女主人が、怪しい笑みをたたえていた。
「その中には異能力者がいます。
…なまえ。私の娘です」
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