薔 薇 色 の 地 獄 。 | ナノ
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目下の泥濘【22】




『王様、お願いがあるんだ』

なまえと王様の約束。

それは、

「わたしが意識をしていない時、呼び掛け無く出てきてくれて構わない。わたしが寝ている時もだ。王様が自分で判断して最善と思えるのなら、出てきて、そして守ってくれていい。ただし、人を傷付ける事だけは決してしないと、それだけを、わたしと約束して欲しい」


あの時。

フリイダムで、『夜の王』は、なまえが呼び掛けるよりも早く現れていた。そのお陰か、爆風と熱から織田作は守ることができた。

けれど。

子供たちは、守れなかった。

織田作。
織田作。

(約束を、したはずだ…)

無理はしては、いけないと。

あの後彼はどうなったのだろうか。解らないまま、なまえはアジトに戻ってきていた。

首領は尚も嬉しそうにしている。テーブルの上には、先刻種田から受け取った黒い封筒が置かれていた。

「それ」は、そんなに、貴重なものなのか。

なまえが首領に問おうと、口を開きかけた、その時。

扉が乱暴に開かれた音がした。太宰が、慌てていた。普段の彼からは想像もつかないくらいに。

「太宰さん…、?」

「おや、太宰くん。君の方から来るとは珍しいな」

「織田作を救援する為の異能力部隊編成の許可を頂きたい」
「いいよ、許可しよう」

「織田作を、救援する…だと?」

なまえが、太宰に問う。

「今、織田作は、…ミミック本拠地で、単身による威力偵察を行っています。このままでは、貴重な異能力者である、織田作が死にます」

頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。
太宰さんは今、何と言ったのか。

まさか。
そんな。

…うまく、言葉が出なかった。

なまえの喉は、ひゅう、と。小さく息を飲んだだけ、だった。太宰は、言葉を続ける。

「ポートマフィアと、ミミックと、黒の特殊部隊…いや、異能特務課。この三組織を巡る対立は誰が操っていたのか…、首領。貴方だ。その封筒には、それだけの価値がある」

封筒。黒い、封筒。

あの封筒を種田から渡されたとき、首領は勝ち誇ったかのように笑っていた。

背筋を冷や汗が滑り落ちるような。嫌な気持ちが、なまえの中で絶えず渦巻いている。

「ポートマフィアがどれだけの力を持っていようとも、政府機関である、異能特務課の機嫌を損ね、弾圧される可能性には常に怯えなくてはならない。なまえ、私が君の異能を制限していたのは、そういう意味もあったのだよ」

首領が、静かに応える。




耳を塞ぎたい。

なまえにもこの後の話の流れが読めてきた。

(太宰、さん…言うな…言わないでくれ…)


なまえは、奥歯を強く噛み締めた。


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