薔 薇 色 の 地 獄 。 | ナノ
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目下の泥濘【7】




「なまえさんの異能が暴走した?」
「…ああ」
「…、」

バー・ルパン。
いつものように、太宰、織田作、坂口と、三人並んでカウンターに座っていた。

「あれはなまえさんの命令のみで動く異能の筈です。宿主であるなまえさんの言葉無しで、勝手に出て来て、行動したというのですか?」
「ああ。確かになまえは『呼んでいなかった』と言った。だが、あの異能は…『夜の王』は出てきていて、あれ自身の意思で行動していたように見えた」
「…なまえさんは、異能を完全に制御できているわけではなかった。それを、なまえさん自身も知らなかった…」
「……、」
「太宰、おまえはどう思う?」
「、ああ、そうだね…、」

なまえの異能、『夜の王』。『守ること』においては右に出るものは居ない、物理攻撃を完璧に遮断する、防御の異能。

「例えば、」

ぽつりと、太宰が呟く。


「織田作が見たように、なまえの王様が、もし、今までのような『防御』だけではなく、…それを逆手にとって『攻撃』へ出るとしたら」

二人は沈黙している。



太宰には、危惧はあった。

「防御の異能。…もし本当に防御だけの異能なら、ただ壁を作るだけでも充分に戦局は抜けられる。…なまえの王様のように、『何かの生き物のかたち』である必要がない」
「…まさか、やはり、」
「あの王様は…何かを隠している?」

太宰が頷く。

「王様が攻撃を開始したら厄介だ。なにせあの異形の身体には、物理攻撃は効かないのだからね。恐らく生半可な異能でも効かないだろう。なまえの身体の接している地面や壁から半径五メートルという制限はあるが、それでも、だ」

「あれがどんな攻撃をするのかは解らないが…」
「なまえさんの異能が、攻撃の能力もあると解れば、」


そう、それを首領が知れば。

きっと、もう前線にしか居られなくなる。




「なまえには…血腥い場所は似合わない」


織田作が呟いた。


「そうですね。年頃の少女がいていい場所ではありませんね」

それに、坂口も同意した。



「…、うん、そうだね」


同じように頷く太宰には、また、別の何かが見えているようだった。




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