微睡は水面深く。 | ナノ
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花束、抱えて


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「本当に悪かった、すまん」
「…、や、お前が謝る事はねぇよ。悪いのはあっちだ」

玄関で、ランサーと士郎。
遠くから誰かの笑い声。大河だろうか。

「それにしても盛り上ってんな。宴会か」
「あー、まぁ、…イリヤが、とっておきのお酒があるとかなんとか」

ぴくり。
ランサーが強張る。

「まさか、名前は呑んじゃいねぇだろうな」
「苗字、…?弱いのか」
「弱いなんてもんじゃねぇぞ。おい、大丈夫か」

慌ただしく居間に駆け込む。
勢いよく引き開けたその空間で、


「よっ!名前!いい呑みっぷりじゃなーい!」

酔い潰れた大河とイリヤ。
ケラケラ笑っている凛。
もくもくと呑み比べをしている桜とライダー。
それを尻目に、静かに夜食を頬張るセイバー。

そして。


「…、名前…!」




「らん、さぁ?」



コップ一杯ですっかり出来上がってしまった、名前がいた。

目が合うと、普段とは全く違う微笑みが返ってくる。


「らんさーだぁ。どうしたんれすか?」
「呂律まわってねえぞ!誰だ名前に酒呑ませたの!」
「ナマエが自ら呑むと言ったのですよランサー。落ち着きなさい」
「ライダー!コレが落ち着いていられるか!
名前は弱すぎんの!こないだもワイン一杯で酔っ払ったんだからな」
「ワインでなければ大丈夫、と言ってたのですが…、」
「アルコールはダメだっての!とにかく帰るぞ名前!」
「えー、今日はお泊まりですー」
「ダメだ!ほら帰るぞ!」

ランサーの腕にしがみついて、名前がぶら下がっている。

「ランサー、今日は泊まってけよ。こんなんじゃ帰るのも大変だろ?」
「…ありがとな。でもお前が大変だろ坊主」
「いや、今さらひとりふたり増えても変わらないさ」

「えみやくんもこう言ってることですしー。今日はお泊まりです!らんさー!!」




そして。




「どうしてこうなった…」


離れの一室。



「サーヴァントたるもの、マスターといっしょにいるのれす」

いまだに名前はランサーの腕から離れようとしなかった。

「名前、俺そろそろ寝たいんだけど」
「いっしょにいるのれす」
「風呂入ってねえだろ」
「朝に入れば問題なしれふ」
「大有りだ。あのな名前、その、…」

ランサーは色々と、限界だった。

「名前、そろそろ離れ…」
「らんさーは、わたひといるのは、いやです?」


見上げてかち合った瞳は、熱っぽく潤んでいる。



「…誰が嫌だっつったよ…」

そっと、ランサーの手が名前の頬に触れる。
くすぐったそうに、名前はその手に頬をすりよせる。



「名前、」


名を呼ぶ。目が合う。
微笑む名前のくちびるに、ランサーの指が触れる。


「…、後悔すんなよ」


触れる。
ランサーのくちびるが触れる、その瞬間。




「我の所有物に気安く触るでない、駄犬が」

ランサーの顔にクッションの柔らかい弾力。




「…テメェ、いつの間に…!」

「何、名前の愛らしい姿を拝もうかと。相変わらず酒には弱いが、酔った姿もなかなかそそるものがあるのう」

「あーあーハイハイ。とっととお前だけ帰れ。名前の面倒は俺が見るからよ」
「犬の分際で独り占めとは、大した度胸だ」
「お褒めいただきありがとうございます解ったら帰れよ金ぴか」
「くちのききかたには注意が必要だ。貴様、躾直されないのか?」
「テメェに躾られた覚えは無ぇな。ほら帰れ」

そのとき、するりと。
名前の手が、ギルガメッシュの服を掴んだ。


「王様も、一緒です?」



二人はそう言って、屈託無く笑う名前を見つめる。


「この犬と一緒…というのが腑に落ちぬが、名前が言うなら仕方あるまい」
「俺だって願い下げだ。おい名前、お前は自分が何を言ってるか解って…、」


寝ていた。

左手はランサーの腕に。
右手はギルガメッシュに。

それぞれをしっかり掴んだまま、名前は寝ていた。




「やれやれ」
「…、ったく」





/花束抱えて、あなたのもとへ。








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ランサーといちゃいちゃ…、をギル様が邪魔するお話でした。
リクエストありがとうございました。

ご希望に添えられていたら幸いです。


はるい。




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