微睡は水面深く。 | ナノ
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未知との遭遇?【後編】


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「はあ、ヒドイ目に遭った…、」

夕食後、行儀が悪いと解っていたけれど、
食器類を片付けたテーブルに、ごろんと上半身を転がしてみる。
暴発した名前の魔力。
スゴイスゴイ、と名前を褒め称えるルビーを、
凛が無理矢理引き剥がして、変身を解いてくれた。

帰り際、アーチャーに
「次は私にも、しっぽと耳を触らせてもらえないだろうか」

と真顔で言われたときには、どうしたものかと迷ったものだが。



「できればもう、変身はしたくないかな…」

「ほう?我は面白かったがな、綺礼にも見せたかったぞ」
「それは流石に…末代までの笑いのネタにされそうなので、
遠慮させてくださいね…」


頭上からギルガメッシュの声がする。
名前はちょっと頭を持ち上げて、その声にこたえる。


「…、はあ、お風呂の準備しよう…」

のろのろと立ち上がり、リビングへ。

ふと見ると、ランサーがソファに寝転んでいた。


「ランサー?珍しいですね、眠いんです?」

「あー…あー、まあそんなもんかなあ、なんか体が気だるくてな」
「サーヴァントでも体調を崩すときがあるんですかね?」
「いや、そんな事は無いんだが、…あー…」

「ソファだと落ち着かないでしょう?ベッドで寝たらどうです?」

「んー、めんどくせえ…」
「そんな事言わないでくださいよ、ほらほら、
そこに寝転がってたらギルガメッシュに踏まれますよ?」

瞬間、むくりと起き上がった。


「…名前」
「あ、はい、なんでしょう?」
「ちょっと話があるんだけどよ、部屋行っていいか?」

「あ、え…、は、はい、どうぞ…」








部屋に入るなり、ランサーは名前のベッドへ寝転がった。


「話、ってまさかベッドを貸せ、って話じゃないでしょうね…?」
「イヤ、それじゃねえけど…ちょっとな、ほんのちょっとなんだが、
魔力が足りてないみたいなんでな」

「…それは、わたしの、ですか?」

「まあなー、昼間のアレで、結構魔力ぶっ放しただろ。
今までは名前が、自分の身体にガタがくるほど魔力を生んでたけど、
こないだの一件でそれもどっか行って安定してただろ」

「そこで、大量の魔力を出しちゃったから…、」

「名前自身に影響は無いし、俺もそんな影響は無いといえば無いんだがな、
ちっとばかしもらえてる魔力が減ってるんで、…からだの維持が難しいんだ」
「霊体になっておけば、多少は維持できるんじゃないです?
わたしの魔力なら心配ないですよ、」

そう言って、名前はポケットから小さな宝石を取り出した。
カットはされていない、ビー玉のようにまるく、
きらきらした宝石、のようだった。


「…何だそりゃ」
「凛ちゃんから貰ったんです。魔力をこめた宝石で…、
飴玉みたいに舐めるといいらしいんです。お薬みたいなもんですかね?」

そして、赤い宝石をひとつ、くちに含む。

「甘いのか?それ」

「飴玉みたいに溶けたりはしないんですけど、少し甘いです。
味がなくなったら魔力がなくなったようになるんですって。
魔力が無くなった宝石はあげる、って言われちゃいました」

飴玉のようにころころと口のなかで宝石を転がす。


「ランサーもひとつ、いります?」

「…んー、そうだなー」
「これでランサーにも魔力が分けてあげられたらいいですね、はい」

もうひとつ、緑色をした宝石を差し出す。

ランサーは寝転がっていた身体を起こし、しばらくそれを眺める。


その手を、取る。


「え?」


引き寄せられる。
ランサーの左手が、名前の後頭部をおさえる。
ランサーの赤い双眸が、すぐそばに、ある。


「らん、さ、何を…?」

「…噛むなよ?」

「え、ちょ…、ん…っ!」


キス、だった。

そう名前が理解した瞬間、それは今までの触れるだけのキスとは違うものになった。
口を割り、ランサーの舌が名前の舌を捕らえようと動く。


「ふ、ん…っ、ふぁ、…」

息ができない。
漏れる声も、生ぬるい温度も。
ランサーに、食べられていく。



「ん、う…、」


ランサーの右手はいつの間にか、名前の左手と指を絡めていた。
手にしていた宝石は床に落ちていた、なんて気づかなかった。

ただただ、ランサーのキスで頭がいっぱいで。
「噛むな」と言われていたから、それは必死に守ろうとしていて。

酸素が足りないのか、それとも別の何かなのか、
頭がくらくらしてきた頃。


「…、ん、ふ、あ…」


ようやく、開放された。
名前の口の中にあった宝石は、ランサーが口に含んでいた。
力なく、名前はランサーの胸にこてんと頭を預ける。


「、………………すんません」
「謝るなら…最初から、しないで、ください…」

「悪い悪い、…しかしこれほんと甘いんだな。
コレで俺もちょっと回復しそうだわ。ありがとな」


子どもをあやすように、背中をやさしく叩くランサー。


「…ランサーの、ばか…」

「はい、…すんませんでした…、」

「……ひとつ、約束してくれます?」


呼吸が落ち着いてきたようだ。
ランサーに預けっぱなしだった名前の上体が起きる。

「わたし以外のひとには、こういうことしないでくださいね」

「しねえよ!断じて!!」

「…ほんとうに?前に凛ちゃんが、
『ランサーは名前だけじゃなくて他の女の子にも平均的に優しいわよ!』
って言ってたので」

「あんにゃろう…」



「……信じてますから、ね?」



それじゃ、とつぶやいて。
名前はぱっと離れて立ち上がる。


「…、おう」

「それじゃあ、約束。小指を出してください」

「、こうか?」


小指を出した名前に倣うように、
差し出されたランサーの小指を絡めて、指きりげんまん。



「よし、じゃあお風呂行ってきますね。覗かないでくださいよ?」

「それは俺じゃなくて金ピカの方に言ってくれよー」
「そうします、…わたしのベッド、使います?」

「いや、…名前、俺がここで寝るっつったらどうするつもりだよ」
「リビングのソファか、綺礼の部屋のソファにでも…」
「すみませんでした自分の部屋のベッドで寝ます」


あはは、と軽く笑って、名前は部屋を後にした。
しばらくベッドに座っていたランサーだったが、

おもむろに手を口にあてがう。

その手には、さっきまで口に含んでいた赤い宝石。
名前から、キスで奪い取った、宝石。



「…、不味いわ、これ」



名前との、あの深いキスのほうがずっとずっと、甘かった。




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どうしてこうなった(白目)

なんというかこう…難しいですね!こういうのは!
すごくよくわからないオチで大変すみませんでした。

ギャグじゃなかったのか、自分。


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