未知との遭遇?【後編】
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「はあ、ヒドイ目に遭った…、」
夕食後、行儀が悪いと解っていたけれど、
食器類を片付けたテーブルに、ごろんと上半身を転がしてみる。
暴発した名前の魔力。
スゴイスゴイ、と名前を褒め称えるルビーを、
凛が無理矢理引き剥がして、変身を解いてくれた。
帰り際、アーチャーに
「次は私にも、しっぽと耳を触らせてもらえないだろうか」
と真顔で言われたときには、どうしたものかと迷ったものだが。
「できればもう、変身はしたくないかな…」
「ほう?我は面白かったがな、綺礼にも見せたかったぞ」
「それは流石に…末代までの笑いのネタにされそうなので、
遠慮させてくださいね…」
頭上からギルガメッシュの声がする。
名前はちょっと頭を持ち上げて、その声にこたえる。
「…、はあ、お風呂の準備しよう…」
のろのろと立ち上がり、リビングへ。
ふと見ると、ランサーがソファに寝転んでいた。
「ランサー?珍しいですね、眠いんです?」
「あー…あー、まあそんなもんかなあ、なんか体が気だるくてな」
「サーヴァントでも体調を崩すときがあるんですかね?」
「いや、そんな事は無いんだが、…あー…」
「ソファだと落ち着かないでしょう?ベッドで寝たらどうです?」
「んー、めんどくせえ…」
「そんな事言わないでくださいよ、ほらほら、
そこに寝転がってたらギルガメッシュに踏まれますよ?」
瞬間、むくりと起き上がった。
「…名前」
「あ、はい、なんでしょう?」
「ちょっと話があるんだけどよ、部屋行っていいか?」
「あ、え…、は、はい、どうぞ…」
●
部屋に入るなり、ランサーは名前のベッドへ寝転がった。
「話、ってまさかベッドを貸せ、って話じゃないでしょうね…?」
「イヤ、それじゃねえけど…ちょっとな、ほんのちょっとなんだが、
魔力が足りてないみたいなんでな」
「…それは、わたしの、ですか?」
「まあなー、昼間のアレで、結構魔力ぶっ放しただろ。
今までは名前が、自分の身体にガタがくるほど魔力を生んでたけど、
こないだの一件でそれもどっか行って安定してただろ」
「そこで、大量の魔力を出しちゃったから…、」
「名前自身に影響は無いし、俺もそんな影響は無いといえば無いんだがな、
ちっとばかしもらえてる魔力が減ってるんで、…からだの維持が難しいんだ」
「霊体になっておけば、多少は維持できるんじゃないです?
わたしの魔力なら心配ないですよ、」
そう言って、名前はポケットから小さな宝石を取り出した。
カットはされていない、ビー玉のようにまるく、
きらきらした宝石、のようだった。
「…何だそりゃ」
「凛ちゃんから貰ったんです。魔力をこめた宝石で…、
飴玉みたいに舐めるといいらしいんです。お薬みたいなもんですかね?」
そして、赤い宝石をひとつ、くちに含む。
「甘いのか?それ」
「飴玉みたいに溶けたりはしないんですけど、少し甘いです。
味がなくなったら魔力がなくなったようになるんですって。
魔力が無くなった宝石はあげる、って言われちゃいました」
飴玉のようにころころと口のなかで宝石を転がす。
「ランサーもひとつ、いります?」
「…んー、そうだなー」
「これでランサーにも魔力が分けてあげられたらいいですね、はい」
もうひとつ、緑色をした宝石を差し出す。
ランサーは寝転がっていた身体を起こし、しばらくそれを眺める。
その手を、取る。
「え?」
引き寄せられる。
ランサーの左手が、名前の後頭部をおさえる。
ランサーの赤い双眸が、すぐそばに、ある。
「らん、さ、何を…?」
「…噛むなよ?」
「え、ちょ…、ん…っ!」
キス、だった。
そう名前が理解した瞬間、それは今までの触れるだけのキスとは違うものになった。
口を割り、ランサーの舌が名前の舌を捕らえようと動く。
「ふ、ん…っ、ふぁ、…」
息ができない。
漏れる声も、生ぬるい温度も。
ランサーに、食べられていく。
「ん、う…、」
ランサーの右手はいつの間にか、名前の左手と指を絡めていた。
手にしていた宝石は床に落ちていた、なんて気づかなかった。
ただただ、ランサーのキスで頭がいっぱいで。
「噛むな」と言われていたから、それは必死に守ろうとしていて。
酸素が足りないのか、それとも別の何かなのか、
頭がくらくらしてきた頃。
「…、ん、ふ、あ…」
ようやく、開放された。
名前の口の中にあった宝石は、ランサーが口に含んでいた。
力なく、名前はランサーの胸にこてんと頭を預ける。
「、………………すんません」
「謝るなら…最初から、しないで、ください…」
「悪い悪い、…しかしこれほんと甘いんだな。
コレで俺もちょっと回復しそうだわ。ありがとな」
子どもをあやすように、背中をやさしく叩くランサー。
「…ランサーの、ばか…」
「はい、…すんませんでした…、」
「……ひとつ、約束してくれます?」
呼吸が落ち着いてきたようだ。
ランサーに預けっぱなしだった名前の上体が起きる。
「わたし以外のひとには、こういうことしないでくださいね」
「しねえよ!断じて!!」
「…ほんとうに?前に凛ちゃんが、
『ランサーは名前だけじゃなくて他の女の子にも平均的に優しいわよ!』
って言ってたので」
「あんにゃろう…」
「……信じてますから、ね?」
それじゃ、とつぶやいて。
名前はぱっと離れて立ち上がる。
「…、おう」
「それじゃあ、約束。小指を出してください」
「、こうか?」
小指を出した名前に倣うように、
差し出されたランサーの小指を絡めて、指きりげんまん。
「よし、じゃあお風呂行ってきますね。覗かないでくださいよ?」
「それは俺じゃなくて金ピカの方に言ってくれよー」
「そうします、…わたしのベッド、使います?」
「いや、…名前、俺がここで寝るっつったらどうするつもりだよ」
「リビングのソファか、綺礼の部屋のソファにでも…」
「すみませんでした自分の部屋のベッドで寝ます」
あはは、と軽く笑って、名前は部屋を後にした。
しばらくベッドに座っていたランサーだったが、
おもむろに手を口にあてがう。
その手には、さっきまで口に含んでいた赤い宝石。
名前から、キスで奪い取った、宝石。
「…、不味いわ、これ」
名前との、あの深いキスのほうがずっとずっと、甘かった。
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どうしてこうなった(白目)
なんというかこう…難しいですね!こういうのは!
すごくよくわからないオチで大変すみませんでした。
ギャグじゃなかったのか、自分。