油断したら負け
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晩御飯を終えた、束の間。
食器を洗う音がキッチンに響く。
明日のご飯は何にしよう。
そろそろ麻婆豆腐にしようか。
とりあえずは課題を済ませて、お風呂かな。
なんて、いろんな事が浮かんでは消えてゆく。
「名前」
「、はい」
言峰に名前を呼ばれた。振り返る。
「大丈夫か、名前」
「は、い?」
「大丈夫か、と聞いている」
「…、……大丈夫、です」
大丈夫、ちゃんと、笑えている。
そう思いながらこぼれた笑みは、
自分でも驚くくらい、貼り付いた微笑みだった。
「…無理をしすぎだ。お前はそこまで器用に振る舞える人間ではなかろう」
「…それでも、わたしは、やるしかないんです…」
消え入りそうな声が、絞り出される。
「じゃないと、わたし、ここに居る意味が、なくなっちゃう…」
ふわりと。
覆い被さるように抱き締められる。
「…常に気を張ることは疲れる。お前はもう少し、肩の力を抜いたほうがいい」
冷たいからだ。聞こえない鼓動。
それでも、彼女には落ち着く温度だった。
「…、ありがとう、ございます…、」
「後はやっておこう。お前は部屋に戻れ、名前」
「はい、すみません、ありがと…」
う。
言い終わる前に、おでこになにかが触れた。
なにか。
「!?」
「綺礼!?あ、いま、な、なにを!?」
「…油断は、したほうが負けということだ」
ならば、もう一度してやろうか?
そう言って、思わせぶりに、人差し指をみずからの唇にあてがう。
くつくつと楽しそうに笑うその顔。
ああ、そうだ。
いつだってわたしは、あなたに勝てない。
油断していてもいなくても、だ。
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ツイッター診断メーカーより、
『油断したほうが負け』
でした。