微睡は水面深く。 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


油断したら負け


----------------------


晩御飯を終えた、束の間。

食器を洗う音がキッチンに響く。

明日のご飯は何にしよう。
そろそろ麻婆豆腐にしようか。
とりあえずは課題を済ませて、お風呂かな。

なんて、いろんな事が浮かんでは消えてゆく。

「名前」

「、はい」

言峰に名前を呼ばれた。振り返る。

「大丈夫か、名前」
「は、い?」

「大丈夫か、と聞いている」

「…、……大丈夫、です」

大丈夫、ちゃんと、笑えている。

そう思いながらこぼれた笑みは、
自分でも驚くくらい、貼り付いた微笑みだった。

「…無理をしすぎだ。お前はそこまで器用に振る舞える人間ではなかろう」

「…それでも、わたしは、やるしかないんです…」

消え入りそうな声が、絞り出される。
「じゃないと、わたし、ここに居る意味が、なくなっちゃう…」

ふわりと。
覆い被さるように抱き締められる。

「…常に気を張ることは疲れる。お前はもう少し、肩の力を抜いたほうがいい」

冷たいからだ。聞こえない鼓動。
それでも、彼女には落ち着く温度だった。

「…、ありがとう、ございます…、」
「後はやっておこう。お前は部屋に戻れ、名前」
「はい、すみません、ありがと…」

う。

言い終わる前に、おでこになにかが触れた。
なにか。

「!?」

「綺礼!?あ、いま、な、なにを!?」

「…油断は、したほうが負けということだ」

ならば、もう一度してやろうか?
そう言って、思わせぶりに、人差し指をみずからの唇にあてがう。

くつくつと楽しそうに笑うその顔。




ああ、そうだ。

いつだってわたしは、あなたに勝てない。
油断していてもいなくても、だ。

-----------------

ツイッター診断メーカーより、

『油断したほうが負け』

でした。


prev|back|next