男の乾いた唇が頬や首筋を愛撫する。
十分に指で慣らされた後、春樹は俯せにされ、腰を抱えられた。
弛んだ後孔へ押し当てられた熱に、喉がひきつり、こぼれ落ちた涙がシーツを濡らす。
「っぁ…、…ひっ…、、…ッ!」
熱い鉄の棒に割り拓かれるようだった。
じりじりと圧迫感を増しながら、男のペニスが春樹の処女地を拓いていく。
(…は…入ってくる……本当に…)
溺れるような呼吸を繰り返す春樹のうなじに、男は唇を落として吸い付き、耳朶や肩を柔らかく滑る。
ぬかるみを確かめるように前後にゆらゆらと腰を揺らし、それはやがて深いストロークに変わっていった。
粘膜を撫でるように窄まりまで亀頭を引き、ゆっくりと挿入する。
チュッ、ヂュッ、と泡立ったローションが破裂するような音を立てて、春樹の直腸を蹂躙していった。
打ち込まれるたびに少しずつ奥へ奥へと侵略地を増やしていき、気付けば根本まで入ってしまっていた。
「っん、ぅ、…っは、、んン…ッ」
拓かれたときの痛みはほとんどない。
内臓を圧迫する苦しさはあるものの、気持ち悪さに繋がるような感覚はなかった。
肌がパチ、パチ、と鳴り合う。
出し入れされるたびに呻き声が出てしまうが、苦痛によるものではない。
ぞわぞわと落ち着かない奇妙な体感。
性的快楽はないけれど、少なくとも、犯される嫌悪感はどこにもいない。
(…お尻も、お腹も、…あつい…)
冷えていた筈の肌がしっとりと汗ばんでいると気付いたのは、何度も腰を掴み直されたからだ。
摩擦のせいなのか、脈打つペニスのせいなのか、繋がりあった場所が熱を持っている。
そこからじわじわと拡がって、指先までジンと痺れるような火照りが届く。
――ギシッ、
吐息を繰り返す春樹に覆い被さり、梶原は優しく奥深くにペニスを捻り込んだ。
低く官能的な声が上から落ちてくる。
(…っあ…、…これ……でてる…?)
じわりとお腹があたたかくなっていくような、そんな気がした。
何度か緩やかに揺らされる。
腹にあった存在がずるりと引き抜かれ、春樹は大袈裟なほど震えてしまった。
泣いて、悲鳴を殺して、女のように精を受け入れて、…もう指一本も動かしたくない。
泣き濡れて腫れた瞼が重い。
ひきつるように乱れていた呼吸が、浅く、細く、静かに繰り返されている。
ギシ…ッ…、
ぼんやりとすすり泣く春樹を腕に抱くように支え、梶原は震え続ける体をゆっくりと仰向けにした。
顔を見られている。
どうすれば良いのだろう。
何も考えられずに、春樹は瞼を閉じたまま様子を伺った。
(…男なのに、犯されて…。怖いのに…。……嫌いって、どうして思えないんだろう……)
同性のペニスを受け入れさせられた苦痛は確かにあったが、強引に捩じ込むことはされていない。
春樹の様子を見ながら丁寧に挿入し、苦しさに呻けば直ぐに律動を止めて、首筋にキスをする。
レイプにかわりはないのに、…春樹は梶原を恐れても嫌いになれないでいる。
関わってはいけない危険な男であると知ったばかりだ。
今までの思い出や想いのせいか、それが例え演技であったとしても、春樹は彼を拒絶出来ない。
それに…――触れてくる指や唇があまりに優しすぎるのだ。
心がちぐはぐで整理もつかない。
「……っひぁ…っ!」
柔らかなペニスを掌に包まれた感覚に、春樹は思考を中断して、ハッと目を見開いた。
力なく開かれた両足の狭間へ、梶原が躊躇いもなく頭を下げる。
濡れた舌を差し出すように、そのまま春樹のペニスに触れ、熱い口内に包み込まれてしまった。
「っあ…! や、っ、ん、ン…っ!」
自分の口から飛び出した高く響いた甘い声に、慌てて唇を引き結んだ。
温かでぬるぬるとした口内の粘膜。
時おり当たる硬い歯のエナメルの感覚。
[
≪ 前のページ‖
次のページ ≫]
≪back