両親が二人とも泊まりがけで出かけて不在になり、家には姉と二人だけになった。
羽目をはずしたくなるのが年頃というもので、姫子は夜まで遊んでから帰宅する予定だった。
結局、友達の都合が悪くなり、いつも通りの時間に帰ってくることになってしまったが…。
扉を開け、そこに見慣れない男物の靴を見つけた姫子は、思わず眉をしかめる。

(…お姉ちゃん、誰もいないからって…あの人連れてきたの…?)

姫子には大学生の姉がいる。
その姉にはひとつ年上の恋人がいて、姫子は彼が苦手だった。
その男が近くにいるだけで、妙な不安が首を絞めるように纏わり付いてくる。
姉の彼氏を悪く思いたくないが、それでも本能が拒むので、なるべく会わないように避けていた。

一階に気配はないので、二階にある姉の自室にいるのかもしれない。
どこかで時間を潰すべきかとも思ったが、外は雨が降りだしていて、わざわざ濡れに出たくはない。
仕方なく足音を立てないよう階段を登り、段々と聞こえてくる“音”に顔をしかめながら、そっと自室に身を潜めた。

ギシ… ギシ… ギシ…
『あっ、あ、あ、あぁー…』

ベッドが軋む音とはしたない女の声。
恥じらいもなく、赤裸々に出される感じ入った響き。
家の中に誰もいないと思って、姉は恋人とセックスに夢中になっている。
姫子はベッドの上で身を縮こまらせ、溜め息を飲み込んで唇を引き結んだ。

『ああん、それ、気持ちいいの…っ、あ、…あー…だめだめ、変になっちゃう…っ』

安っぽいAVを聞いているみたいだ。
実の姉の乱れようが居たたまれず、姫子はイヤホンを耳にさして音楽を流した。
それでも神経が毛羽立っているのか、すり抜けるように聞こえてくる。
姫子はその膝を抱えて顔を伏せた。


■ □ ■ □ ■


どれほどの時間が過ぎたのだろう、音楽を隔てた世界は静かになっていた。
イヤホンを外して様子をうかがうが、セックスの音は聞こえてこない。

(……終わったのかな…)

二人で眠っているのだろうか、それとも下に降りていったのだろうか。
姫子が一息ついた時だった。

――…キィ……、

姫子の部屋の扉が開けられた。
そこにいたのは姉の彼氏だった。


「久しぶり、姫子ちゃん。遅くなるって聞いてたけど、帰ってたんだね」

「…っ!?」


上半身は汗ばんだ素肌をさらし、おざなりに穿いたズボンは前もしめていない。
ゆるめられた隙間からは濡れた陰毛が見え、下着すら身に付けていないようだった。
パタン、と後ろ手に閉められる扉。
姉とセックスをした名残をそのままに、男は姫子の部屋へ入ってきてしまう。

(な、なに…っ?)

とっさに逃げようとベッドの上を後退しても、直ぐに背中が壁にぶつかった。
怯える姫子を追い詰めるように、男もまたベッドへ乗り上げた。


「酷いよな、あいつ、自分だけイキまくって寝ちゃったんだ。まだヤり足りないのにさ…」

「っ、そ、そんなの知らない…」

「制服可愛いねぇ、姫子ちゃん高1だっけ。でも処女じゃないんでしょ? 代わりに相手してよ」


―――え?

硬直する姫子を壁に押さえつけ、男は手際よく少女からショーツを剥ぎ取った。
突然降りかかった姉の恋人による凶行に、少女は身をすくませて怯えた。
ほっそりとした両足を強引に開き、自分の体を割り込ませる。
息がかかるその距離に、触れてくる掌に、姫子は必死に首を振った。


「俺らがヤッてんの聞いて、濡れちゃった? 慣らさなくても入りそうじゃん」

「っ、や…止めてください…っ」

「マン汁だらだら垂らしながら嫌がるんだ?」


体を捩ろうとしてもかなわない。
開いていたズボンの前からペニスを出して、男は見せ付けるように内腿に擦りつけてくる。
使い込まれた赤黒い肉塊はグロテスクで、姫子は強く目蓋を閉じた。


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