姫子が生まれ育つ場所は、都心部からも離れた田舎町だ。
見渡す限りに見える山、田園。自然が豊かと言えば聞こえは良いが、特産も何もない辺鄙な地方。
田舎とはいえ、スーパーや病院、もちろんコンビニだってある。
けれど若者が遊べるような娯楽場などはなく、そのせいか、成人して町を離れていく者が多い。

ひとクラスしかない学年。
保育園から始まって、小学校、中学校、過ごすクラスメイトは変わらないまま。
姫子はそれが嫌で地元からはなれたくて、勉強して都心部の高校へと進学した。
乗り換えのある電車通学は大変だが、それでも良いと思えるほど毎日が楽しい。
姫子は積極的に友人を作り、遊び、日々を過ごしていた。


* * * * *


ガタンガタン…
ガタンガタン…

アルバイトを終え、帰路に着く頃には夜の八時を回っていた。
乗り継ぎの電車は駅に停まる度に人が降りていき、乗車するものはいない。
この路線は終点が姫子の最寄駅になる。時間もあって利用客は少なかった。
車両には自分を含めて五人。
姫子の対面ではくたびれたサラリーマンが本を読んでいる。

――姫子の一人遊びが始まった。

(こっちに気付くかな…?)

スマホを見るふりをして、小さくローファーの踵を鳴らしてから、姫子は足を組んだ。
制服のスカートが僅かにめくれる。サラリーマンが視線を寄越してきたのが分かった。
スカートから伸びる健康的な若い素肌、細い足首、柔らかな太腿。
チラチラと盗み見てくる視線が、這うように肌を舐めていく。

(…エッチな目で見られてる…)

姫子の膣がじわ…と濡れていく。
娯楽のない生活に飽いた少女は、歪んだ性感を求めるようになっていた。

小さな町で知り合いばかり、初めての都心部の生活で得た刺激。
友達に勧められるまま借りた過激なティーンズコミックは、姫子に“性”というものを焼き付けた。
更に拍車をかけたのが、同い年の少女たちの赤裸々な体験談だ。
彼女たちは既にセックスの経験があるのに、姫子はオナニーさえしたことのない生粋の初だった。

好奇心にかられて初めてした自慰。
その快感にハマり、今ではほとんど毎日のようにしている。
枕や布団に擦り付けるだけだったそれが、やがて指へと代わり、クリトリスから膣への刺激になっていった。
それでもまだ指を一本使うだけのもので、恋人のいない姫子は処女のままだ。

なにも知らない少女の好奇心は加速していき、性感に貪欲になっていく。

学校で時折あびる男子からの下品な視線に、姫子は股を濡らすようになった。
思い出しながらしたオナニーがたまらなく気持ち良くて、男の視線を向けられるよう、わざとそういった振る舞いをした。
時間をもて余す通学の電車内で、姫子は悪癖を繰り返し行っている。

(良くないことだって分かるのに、エッチな目で見られるの…気持ちいいから止められない…)

スマホを見るのをやめ、姫子は瞳を閉じて眠ったふりをした。
こちらが無防備になれば、向けられる視線は強く、あからさまになる。
そのギラギラとして粘つくような眼差しが欲しくて、姫子は誘うように足を開いた。
こぶしひとつ分から徐々に開いていき、膝を離して内股を見せ、対面席からスカートの奥が見えるまで。

(ちょっと恥ずかしいけど…。男の人って、こういう…エッチなのが好きなんだよね…?)

こっそり買ったランジェリーは田舎育ちには派手に感じてしまい、とても親には見せられない。
わざわざ駅のトイレで履き替えている。
可愛いフリルとセクシャルなレース、普段は身につけないピンク色。
途絶えることのない強い視線に、姫子はショーツを濡らして興奮していた。


――男を弄ぶような少女のそんな一人遊びに、罰が降りかかる時がやってきた。

ギィ…、、と僅かな物音と共にシートが沈む。
右隣に気配が現れた。

(……え…?)

――誰かが隣に座ったのだ。


[次のページ ≫]

≪back

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -