結ばれることの許されない想い。
見て見ぬふりをして忘れることも、捨てることも出来なかった。
繋がり合いたい。
肌を合わせたい。
処女でいながらその欲望を叶えられるのが、アナルセックスだった。

(あ、あ、気持ちいい…いい…っ)

好きな人と繋がる行為の、なんて気持ちいいことか。
心が満たされる。彼の愛を知る。
幼い女の恋といえど、張り裂けそうな想いを抱えている。
幸せだと魂が感極まって叫んだ。


「あぁ…ん…、ん、…宗一郎……好き…好き…、あぁ…すき…」


快楽にとけた頭で、たまらず…といったように姫子はすすり泣いた。
告げてはならない言葉だとお互いが分かっているのに、熱に浮かされたこの瞬間、どうしても溢れてきてしまう。
戯れの言葉として片付けなければいけない愛を、少女は熱心に捧げた。


「お嬢さま…あぁ…、…姫子さま…」


老執事のかすれた声が、男じみた色を乗せて、低く唸った。
譫言のように「すき…すき…」と吐息を落とす姫子を、熱い眼差しでじっと見つめ、耳を澄まして聞き入る。
健気で愛しい痴態を記憶に刻んだ。

グチュッ、ヌ、ヌチュッ グプ
ぱちゅっ ぱちゅっ バヂュッ

主人の娘に仕える執事ではなく、女を求めるただの男となって、姫子の内側を犯し尽くしていく。
徐々に老執事の腰の動きは気付けば早くなり、タン、タン、と互いの肌がリズミカルに打ち鳴らされていた。
姫子は口元を手で覆い、嬌声を押し殺した。

手袋越しに男の手が強く姫子の腰を鷲掴み、強い仕草で股間を叩き付けられた。

パン…ッ!


「っ、――――…!!」


愛液が溢れてくる膣も、勃起して剥き出たクリトリスも、一度として触られることなく姫子は上り詰めた。
直腸が蠢いて愛しいペニスを舐める。
締め付けてくる肉壁に包まれながら、老執事も続くように射精した。
薄いコンドームが受け止める。

はぁっ、はぁっ、はぁ…っ

部屋に2人分の荒い呼吸。
愛し合った余韻も味わえないまま、男性器がヌルリと抜かれる。
時間が限られているのだ。
重なりあった熱い肌が、心に痛みを刻んでほどかれる。


「…宗一郎…」

「…ええ…口を開いて…」


上向いて口を開いた姫子の小さな舌の上へ、精液の溜まって伸びたコンドームの先端を乗せた。
唇をすぼめて咥えて歯を立てれば、途端にドロリと口内に溢れてくる。
姫子はうっとりと味わった。
細い喉が静かに動く。
食道を滑り、胃へと落ちていく。
どれだけ愛しくても、この男の精子を子宮で受け止める事は許されない。
愛し合った後に訪れる切なさに、姫子は決まって、スキンに出された僅かな精液を啜った。
そんな少女を老執事は目に焼き付けるようジッと見つめ、心へ、記憶へ、仕舞い込む。

キスはしない。出来ない。

……衣服の乱れを整える間も、2人は時折、そっと見つめ合った。
唇の代わりに視線でキスをする。
瞬きはバードキス。
瞳の奥を見つめ合って舌を絡める。


「…17時からピアノのお稽古がございます。先生がお着きになられるまで、どうぞお休みください」

「ええ…そうするわ。宗一郎も、仕事に戻ってちょうだい」

「はい、失礼いたします」


長年培った美しい所作で丁寧に頭をさげ、老執事はワゴンを押し、セックスの生々しさも見せずに退室していった。
最後に一度、視線を合わせて口付ける。
さよならのキスだ。

(ごめんなさい宗一郎、好き、好きなの、…苦しいわ…)

あとどれくらいの時間、この人と過ごせるのだろう。
体を合わせることが出来るのだろう。
恋をし続ける事を自分に許せるのだろう。


姫子は唇を指でなぞり、恋したう男の、知ることのない唇に想いを募らせた。


end

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