魔法と騎士とモンスター。
地上、地底、海の中、天空、そこを生活区域としてあまたの種族が暮らしている。
ファンタジーが息づくその世界。
とある国のとある歓楽街は、訪れる人が絶えることのない賑やかな場所だった。

栄華を誇る巨大な建築物。
きらびやかな喧騒に彩られたカジノ。
世界中の商品が集まる市場。
艶やかな女たちが住まう娼館。
息抜きにと旅人が立ち寄り、富豪が集まってパーティーを開き、良し悪し混ざりの商人が客を呼ぶ。
歓楽の都。眠らぬ街。
廃れることを知らない夢の大都市だ。

だが、底抜けの明るさと華やかさとは裏腹に、違法行為がまかり通る陰湿さも、その街にはあった。

華やかな地上のその真下。
公然の秘密として存在する地下街。
人間も妖精も売買される闇市、盗難品のオークション、大金が飛び交うギャンブル、命を賭けたコロシアム。
お忍びで高官や王族が訪れることもある地下街で、ひときわ人気を集めているのが、見世物小屋だった。

『極東の女』
それが姫子の“商品名”だ。

貿易に訪れていた異国人に浚われ、他の少年や少女たちと遠いこの国へと連れてこられ、そしてオークションに出品された。
同郷人が買い取られていくなか、姫子はこの歓楽街で店を営む男に買われ……。
モンスターに犯される商品として、見世物小屋で働かされることになってしまった。

催淫剤や精力剤を盛られたモンスターと、檻の中に閉じ込められる。
周囲に張り付く観客に見られながら…人外に犯し尽くされるのだ。

魔獣キメラとの交尾。
グレムリンやゴブリンから受ける、群がるような執拗な輪姦。
ケンタウロスの長い種付け。
スライムの触手プレイ。

普通なら体なんてとっくに壊れてる。
ボロボロに扱われた心だって、擦りきれて朽ちてもおかしくない。
むしろいっそのこと壊れてしまったなら良かったのに。彼女にとっての不幸は、加護持ちの巫女だったことだろう。
痛めつけられる身体は姫子を庇護する神によって守られ、壊されることなく、ひなびることはない。
狂いたくとも、心さえ、姫子の意思など関係なく護られてしまい、正気を失えずにいる。

(…神様、神様、見てくれているのなら、どうして助けてくれないの…)

何をしても壊れない商品。
店では姫子を重宝し、目玉商品として売り出していった。


* * * * * * *


『見世物小屋パンドラ! 見世物小屋パンドラ! お待たせいたしました、ただいまよりオープンいたします!』

ふしだらな賑わいを見せる地下街に、エンターテイナーの軽やかなアナウンスが流される。

『本日の見世物は“極東の女”。“極東の女”と醜いオークの種付け交尾です。是非、見世物小屋パンドラにお立ち寄りください!』

アナウンスを聞きながら、姫子は震える足でよろよろと歩いていた。
躾役に引いて連れてこられた檻(ステージ)は、見世物小屋の中央にある。
薄布のワンピースを一枚。
バターミルク色のなめらかな肌と、神秘的な黒い髪、黒真珠のような瞳。
小柄な体にどこか幼い顔。
『極東の女』はミステリアスなその容姿が客に人気だった。
今日も多くの観衆が集まっている。

(…ああ…、今日もまた、悪夢が始まってしまう…)

檻の中で姫子は落ちつきなく視線を彷徨わせ、ぶるぶると震えながら立ち尽くした。

ギギ、ギ、ギィ…ッ

向かいの檻で大きな音が鳴る。
重たげな鉄扉が開かれ、巨体のモンスターがあらわれた。
豚の頭をした醜い顔の怪物。
オークだ。
興奮した様子のオークは、檻越しに姫子…“メス”を見つけると、勢い良く走り寄ってきた。
檻と檻を仕切る鉄柵にしがみついて、苛立たしげにガシャガシャと揺らしている。


「っひ…!」


巨漢のオークの腰布を押し上げる、勃起したペニスの恐ろしさ。
人間の物とは比べようもなく巨大で、異質で、まさしく化け物だ。

鉄柵がガラガラと上げられる。
オークは待ちきれぬとばかりに、地面との間に出来つつある隙間へと身体を押し込め、侵入しようとしていた。


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