あっという間に三月になった。
ナショナルトレセンのため、俺たちは九州を発った。
「バリ広かー!キャプテン、カズ先輩!すごかですよ!」
「騒ぐなアホ」
昭栄に蹴りを入れ、帽子を深くかぶりなおす。
確かに広い芝生に大きな宿舎は感動する。
たえかねたどこかの選抜の奴らが練習をしているのも見える。
青いユニフォームの背中にはTOKYOと書いてある。
「東京、か」
渋沢も当然いるのだろうな、と辺りを見回したところで、ふと目を留めた。
「あれ?女の子がおりますよカズさ…ってカズ先輩?」
東京選抜のジャージを着た、ブラウンのポニーテールの少女。
気がつけば俺は、少女に向かって走り出していた。
[2/3][
top]