宇宙兄弟
「うちゅうちゃん、新田と何話してんだろ…」
俺は窓の外を見ながらつぶやく。
「さぁね」
「なんかケンジ冷たい。」
「別に。ムッくんがモタモタしてるから新田君に先をこされちゃったんじゃない?」
「ぬぅあにーーー!!!」
ケンジの思わぬ発言に立ち上がってしまった。うそっ、嘘だよねケンジ。新田がうちゅうちゃん好きなんて聞いてないんだけど!ってか新田の前で散々うちゅうちゃんの話してたから…えっ、だから俺には言ってないとか?えっ、マジで!?
確かに外を見ればそんな雰囲気に見えないこともない。なんかうちゅうちゃん顔が赤いし、照れてる感じ?
「俺、ほしのことが好きなんだ。」
「えっ…あの、あたしも新田さんのこと…って、うおーい!
ちょちょちょ待て新田!俺のうちゅうちゃんを!
「ムッくんのうちゅうちゃんじゃないけどね。」
「勝手に人の心を読むな!」
「ムッくんってうちゅうちゃん好きって言ってるけど、伊藤さんのことはどう思ってるの?僕にはムッくんの好きな人が分からないよ。」
「へ?うちゅうちゃんとせりかさん?」
せりかさんは、そりゃあ美人だし優しいけど…好きとは違う。憧れとでも言うべきか。
でもうちゅうちゃんは…!
うちゅうちゃんといると、心臓がバクバクして煩いぐらいなのに何故か心は穏やかで、もっと一緒に居たいと思う。
笑ったり、怒ったり、でもまたすぐに笑ったり…コロコロと変わる表情をずっと見ていたいと思う。
その髪に、その手に、その頬に、触れたいと思う。
願わくば、俺の隣でずっと笑っていて欲しい、と思ってしまう。
「うちゅうちゃんはムッくんの好きな人は伊藤さんだと思ってるよ。」
「せりかさんは仲間だから気兼ねなく話せる訳であって、うちゅうちゃんの時は内心バクバクで気負っちゃうっていうか…」
「それがうちゅうちゃんには"私と話してる時より、せりかさんの時の方が楽しそう"って見えるみたいだね。」
「そうじゃないのに〜、どうしたらいいんだ…。」
「想ってるだけじゃ伝わらないよ。好きだから好きって言う、それしかないんじゃないかな。」
「…ケンジ」
「今のは受け売りだけどね。」
「誰の??」
ケンジと話してるうちに、外の会話は終わったらしく新田とうちゅうちゃんは店の中に入ってきた。
2人の間の雰囲気が少し変わったのが分かる。きっとケンジの言ってたことはあたっていたのだろう。
それがどういった結果だったのか俺には分からない。ただ2人の間に流れる気恥ずかしさを明るく盛り上がることで誤魔化しているようだった。
ーーー…
「なぁ、4人で二次会いかねぇ?」
「いいね!賛成だよ。」
「ほしも南波も明日休みだろ?」
「あ、うん」
「新田っ、俺も今それを言おうと思ってたところだ!」
クリスマスパーティーも終盤に差し掛かったころ、新田が新田らしくもない提案をしてきた。
勢いで行くとか言っちゃったけど、これもしかしたら新田とうちゅうちゃんのお付き合い報告とかじゃねぇだろうな。
「俺たち付き合うことになったんだ。悪いな、南波。キラーンッッ」
みたいなっっ!なんだよ、全然爽やかじゃねぇよ!みたいなっっ!!!
そんなことになったら、どーーーすんの俺っ!!
…その後も俺のモヤモヤが解決されることはないまま、うちゅうちゃんが主催したパーティーは無事に幕を閉じた。
NASAのみんなは「お疲れ様!」とうちゅうちゃんに声をかけながら店を出ていき、そのまま自宅へ帰る者、まだ飲み足りず2軒目へ繰り出す者、それぞれ散り散りに分かれて行った。
最後までみんなを見送った俺たちも店を後にし、次なる店へ向かって歩いていたのだがケンジが何か思い出した様に口を開いた。
「あ、新田君、そういえば僕たち課題があるよ…」
「げっ、忘れてたな。」
「「えっ!?」」
思わぬ発言に俺とうちゅうちゃんの声がかぶった。
「僕たち帰らないと…」
「まぁお前らは2人で二次会すりゃいいじゃん。」
「「えっ!?」」
「じゃーね!」と言って2人はあっという間に帰っていき、俺とうちゅうちゃんはあまりの急展開について行けずしばらくその場に立ち尽くした。
ケンジ…。
もしかして、これうちゅうちゃんと2人っきりになる作戦?そんな作戦立てたっけ?俺なんにも聞いてないんだけど!
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