宙兄弟
メリークリスマス!





さすがクリスマス。
どこも混んでいた。
やっと入れた店もカウンターなら案内できるということだった。

いつもなら選ばないようなオシャレな雰囲気が漂っているその店で、南波さんと隣同士だなんて…!

心臓がドキドキしすぎて死にそう!!


「幹事お疲れ様。ごめんね、俺が提案したのにこんな事になっちゃって。」
「いえ、全然大丈夫です。楽しかったし、新田さんも手伝ってくれたので…」
「そっか…。あ、ダンスが踊れてスゴイ楽しかったよ!」
「…そうですか!それなら良かったです…」


ヤバイ、会話が続かない。
変に緊張しちゃってるのが悪いんだって分かってるのに、上手くいかない。
頭で話題を探してしまうから、自然に話を振るにはどうしたらいいんだろうってかまえちゃって言葉が出てこない。

南波さんもいつものように話しかけてくれないから、きっとつまんない女って思ってるのかも。せりかさんと話してる時のような笑顔が見たいのに…。

でも、静かにお酒を飲む南波さんもかっこいいかも。なんて横顔を盗み見る余裕はあるらしい。しかしみんなには何でこの良さが分からないんだろう。


「俺の顔になんか付いてる?」
「へ?いえ、そういうんじゃなくて!」
「ん?なんか変?俺、浮いてる?こんな店、来たことないしっ」
「あははっ、南波さんが浮いてたら、あたしなんて場違いもいいとこって感じですよ。いい店過ぎて緊張しますよね。」
「新田なら、すました顔で酒飲むんだろうなー。ごめんね、俺なんかで…」
「あたしは南波さんと2人で飲めて嬉しいですよ!」


「あ、ありがと。」


真っ赤になった南波さんをみて、あたしは自分が言ったセリフの恥ずかしさに気がついた、と同時に自分の顔がどんどん熱くなっていくのが分かった。
何言っちゃってんの、あたし!


「俺もうちゅうちゃんと飲めて嬉しいよ。」


照れながらも、そう言ってくれた南波さんを見て胸がギュッと痛くなった。



…ドキドキしすぎて死にそう。



ーーーー…


「ラストオーダーですが、ご注文はございますか?」


「うそっ!もうそんな時間か!」
「あっという間でしたね。」

時計を見ると深夜1:30を過ぎていた。
俺たちはホットコーヒーを一杯づつ注文して、店が閉まる2時前には店を出た。
うちゅうちゃんは家がこの辺りらしく、歩いて帰れる距離だということで家まで送ることにした。

「ごめんね、こんな遅くなっちゃって。」
「大丈夫ですよー、すっごく楽しかったです!」
「俺も楽しかった。」

ニコニコしながら歩くうちゅうちゃんを見て、それがお世辞ではなさそうなので安心した。
いろいろな話をして、うちゅうちゃんのことを少ししれた気がした。しかし俺は一番気になっていることをまだ聞けずにいる。

新田のことだ。

2人の間で何かあったことは、間違いないはず。さりげなく、さりげなーく聞いてみよう。


「そういえば今日さ新田と外にいた、よね?何か話してたの?」
「…あぁはい。…聞いちゃいますか、それ。」
「えっ…ああ、別に話したくないならいいんだけど…」


さりげなくなんて俺には無理だったよ。うちゅうちゃんめっちゃ話したくなさそうだし、なんか空気重いし、さっきまでのいい感じの雰囲気をぶち壊しにしてなにやってんだ、俺っ!





「…あたしには好きな人がいるって話をしてたんです。その人に好きな人がいてもやっぱり諦めきれないって。」
「えっ…」
「ちゃんと好きって伝えなきゃダメだって新田さんが教えてくれたんです。」
「その好きな人って…?」
「………それは」


待てよ、それ聞いちゃったら俺に告白するタイミングなくね?


「ちょっと待った!言わないで!俺っ、俺はうちゅうちゃんのこと…」


「あたしが好きなのは南波さんです!


「へっ??」

「南波さんがせりかさんのこと好きでも、あたし南波さんが好きなんです!!」




目を潤ませて、耳まで真っ赤になりながらうちゅうちゃんはそう言った。
俺もちゃんと伝えよう。伝えなきゃ。




俺の好きな人は
せりかさんじゃない




うちゅうちゃんが好きだ。
嘘だぁー!そんなはずないよー!
えっ!?そんなはずあるよ!
南波さんはせりかさんが好きなんだ!
違うって!うちゅうちゃんだよ!
だってだってだって!!
うちゅうちゃん、ちょっと黙って。

んっ


メリークリスマス!











ーーー…

「お前のことが好きなんだよ。」
「新田さん…あの、あたし…」
「分かってる。困らせたくて言った訳じゃない。ただほしにあんなこと言っといて、自分が気持ち伝えてないのに偉そうなこと言えねぇなって思って。」

(好きだから好きっていう、それ以外に何があんだ?)

「俺の気持ちに応えなくていい。でも知っておいてくれ。」
「…はい…」
「次はお前の番だな」
「はいっ…新田さん、ありがとうございます。」

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