「……ごめんなさい」
家が見えてきたところで、フレンが酷く弱弱しい声で呟いた。
同時に足も止まる。
カルテは首だけ振り返りフレンを見た。
俯いている彼女はとても小さく、今にも消えてしまいそうだった。
「……どうして謝るの」
「……フレンが、余計なこと言ったから」
今にも泣きだしそうな表情をしているフレンを、カルテは無表情で見つめる。
やがて、おもむろにフレンの頭に手を置いた。
「……カルテ?」
フレンが目を丸めてカルテを見上げる。
彼は無言のまま、フレンを見下ろしていた。
しかし手は置いたまま。
静寂が流れる。
「……カルテ、怒ってる?」
しばらくして、フレンが呟いた。
「別に怒ってない」
「本当っ?」
桃色の瞳は不安げにカルテを映している。
「本当に、怒ってない……?」
確かめるように尋ねるフレンに、カルテは無表情で頷く。
するとフレンの顔に喜びがあふれ、幸せそうに目元を綻ばせた。
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