フレン | ナノ




13

「……ごめんなさい」

 家が見えてきたところで、フレンが酷く弱弱しい声で呟いた。
 同時に足も止まる。
 カルテは首だけ振り返りフレンを見た。
 俯いている彼女はとても小さく、今にも消えてしまいそうだった。

「……どうして謝るの」
「……フレンが、余計なこと言ったから」

 今にも泣きだしそうな表情をしているフレンを、カルテは無表情で見つめる。
 やがて、おもむろにフレンの頭に手を置いた。

「……カルテ?」

 フレンが目を丸めてカルテを見上げる。
 彼は無言のまま、フレンを見下ろしていた。
 しかし手は置いたまま。
 静寂が流れる。

「……カルテ、怒ってる?」

 しばらくして、フレンが呟いた。

「別に怒ってない」
「本当っ?」

 桃色の瞳は不安げにカルテを映している。

「本当に、怒ってない……?」

 確かめるように尋ねるフレンに、カルテは無表情で頷く。
 するとフレンの顔に喜びがあふれ、幸せそうに目元を綻ばせた。

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