012: フィロ・クラベル

012-2: clergyman × faithful(信徒)

俺はなんということを……ああ、どうかお許しください……!
(清浄な空気を湛えた至聖所の手前に額突く姿勢で呆然と、罪悪感に押し潰されそうな胸の前で合わせた両手がみっともなく震えるのを抑える術も分からず、血の気の失せた唇が幾度も幾度も謝罪を紡ぎ。どれだけの時間をそう過ごしていたのか、繰り返す懺悔の途中に背後から近付く足音が耳に届き、聖堂内に他人の存在があると漸く知る。慌てて立ち上がって見てみれば、そこには普段から教会の運営を手伝ってくれている相手が案じるように己に目を向けており、元々蒼褪めていた顔色を更に青くしてさっと起立し)
き、気が付かず申し訳ない……少し考え事をしていました。ああ、ええ……問題ありません、お心遣い傷み入ります……。
(考え事で済むような尋常な様子では無かっただろうが、そう言う以外になく、相手が納得していない気配を感じ取りつつも、その信仰の篤さを知っているからこそ余計に真実など打ち明けられない。真っ直ぐ注がれる無垢な視線から逃れたくて背を向けようとした拍子に、昨晩、意に反して疲弊させられた下肢がふらついた。咄嗟に腕が宙を掻き――その腕を取って引いてくれた相手のお陰で転倒は免れたものの、布地越しにも感じられる体温に顔を強張らせ、足元がしっかりするや否や、咄嗟に振り解くように手を払ってしまい)
ッ……あ、いや、これは……違う、済まない、あなたではなく私が、……俺は最早あなたの前に立つ資格がないのです。口にする事も出来ない愚かな行いをしました。俺は、許されざる事を……!
(自身の行動に対する困惑と申し訳なさから吊り気味の眉尻が弱々しく下がり、不安定に揺らぐ緑の目が、行き場を無くして宙ぶらりんになったお互いの腕の間を行ったり来たり。相手の体温によって、まだ肉体に留まる昨夜の熱が煽られそうになった事実を自身も受け止められず、心配に甘えて何かあらぬ事を口走りかねない口元を掌で覆い隠すと、いよいよ抱えるものの重さに耐えられなくなったようにがくりとその場に頽れ)
済まない、……こんなのは裏切りに他ならない……。罪深い我が身をどうしたらいいのか、俺は……。

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