012: フィロ・クラベル

012-6: clergyman × ...

……っ!?
(フルーツを切り分けていく横でハンドミキサーの羽が空回るような音がしたかと思えば、次の瞬間、何かが視界の端を掠めたことに驚き、咄嗟に飛び退く。状況を呑み込めないまま目を点にして横を見るとそこにはボウルを抱えて出来損ないのホイップクリームにまみれた相手、それから首を回して、今さっき自らにも襲いかかった白いクリームが模様のように点々と飛散したキッチンの惨憺たるさまを確認し、しばし呆気に取られ。どうやらともにキッチンに立っていた相手がハンドミキサーで泡立てていたクリームの浅い部分を掬ったがゆえに暴発したらしく、そのエプロンに付着した泡になりかけの塊がぼとりとキッチンカウンターに落ちたところで、引き起こした惨事にまだ一言も発していない相手の肩を恐々と叩いて声をかけ)
だ……大丈夫か? っ、ふふ……いやすまない、気にするな、失敗は誰にでもあることだから、……ああ、ずいぶん派手に飛ばしたな。
(幸運にも自分は被害を免れたが、こちらを振り向いた相手のほうはと言えば前面がまだらに乳白色になっていて、堪えきれずに笑ってしまう口元を手の甲で隠し。中身の大半が失われて軽くなったボウルを預かるとカウンター上に出してあった濡れ布巾を取り、確かめつつ汚れた相手の頬や髪を優しく丁寧に拭いていき、軽く腰を屈めて下方から覗き込んだ相手の顔の、唇の際に跳ねたクリームを見咎めて指先で拭い取り)

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