「ありがとう!シズちゃんイザイザありがとう!リアルBLごちそうさま!私は二次元派だけど二人なら問題無し!むしろそんだけビジュアル的にも美しければ大歓迎、応援してる!」

「そうっすね…俺はBLはクロイズのゆうちゃんくらいしか受け付けられないんすけど…これはもうそっちのフラグっす、良かったっすね狩沢さん!」


きゃあきゃあとやたらと盛り上がる二人。シズちゃんはようやく場所の移動に気付いたようで、「んだこいつら」と機嫌悪そうに呟いた。どうやらだんだんと元のシズちゃんに戻ってきているらしい。俺はほっと胸を撫で下ろしつつ、本題に入った。


「まあ、その盛り上がりはよくわかんないけど状況はそんなとこでー…本題は、どうしたら戻れるかなってとこなんだけど」

「…俺はもうノミ蟲の身体なんぞで生活していく自信を無くした」

「ああシズちゃん、…おかえり?…俺は初めっからそんな自信無かったよ。ずっとシズちゃんの身体なんて、想像しただけてさぶいぼ出ちゃう」

「…んだと手前」


拳を振りかぶるシズちゃんに、いつもなら背筋を嫌な汗がたらりと濡らすところだが、俺の身体じゃたいして脅威にならない。難なくその拳を受けとめると、シズちゃんは眉間にこれでもかと言わんばかりにしわを作った。


「…やわい。手前の身体やわすぎ」

「あのねー、シズちゃんが異常なの。っていうかシズちゃんいきなり戻りすぎ。さっきまで老人ホームで日の出を見てるおじいさんみたいに大人しかったのに」

「何だその例えは!」


さっきの弱さなら避ける必要もなさそうなので、繰り出されるパンチを甘んじて受ける。がつん、と音がしたから頭を殴ったようだが、はっきり言って全く痛みが無い。ん?何か乗ったかな?くらいの感覚だ。シズちゃんの身体のそういうところだけはうらやましい。一方殴った俺の身体のシズちゃんは指を押さえてうずくまった。


「ちょっとー…俺の身体それ以上傷つけないでくれない?」

「うるっせえ黙ってろ…」


ううう、と唸りながら指を押さえるシズちゃんにドタチンが絆創膏を差し出している。
狩沢と遊馬崎は二人で勝手に盛り上がっているし、運転している渡草は先ほどから一切会話に加わらず、聖辺ルリの歌う何かの曲をリピートして、我関せずと言わんばかりに口笛すら吹いている。
そんな奴等を見ていたらだんだんイライラしてくる。シズちゃんの身体だからかな、と考えつつ、この状況を打破するために少しだけ大きな声を出した。


「ー…とにかく!どうにかして戻れないかな!?」


狙いどおりというか何というか、奴等の目はこちらへと向いた。はい、と遊馬崎が手を挙げた。俺は彼を指して、発言を促した。


「寝て起きたら戻ってると思うっす!」

「既に二日目突入しました、ハイ次!」

「はい!」

「はい狩沢さん!」

「頭をぶつけてみるとかどうかな!」

「シズちゃんが寝てる間にやってみましたが無理でした!ハイ次!」

「手前勝手に何やってんだ!朝頭が痛かったのはそれでか…!」


ポンポンと挙げられては消える意見に絶望が見え隠れする。はい、と再び手を挙げた狩沢をもう一度指すと、彼女は自信たっぷりにこうほざいた。



「もうチューするしかないと思います!」



ブシャ。

シズちゃんの分のハンバーガーも圧縮された。











続き


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