「見たか?」
「見た見た!」
「マジで?どの辺?」
「新宿だろ?」
「池袋だしwww」
「ハンズの近く」
「西口公園だよ(^O^)」
「平和島静雄と折原臨也が二人で一緒に歩いてるんだろ?」
「バッカちげーよ、手え繋いでんだよ」
「サンシャインにいた!」
「一緒にラブホに入ったらしいぜ」
「マジで!?」
「それはないwww」
「いやガチらしい」
「ソースは?」






噂というものは本当に怖いものだ。

ダラーズの掲示板を見てため息をつく。二人でもなければ手を繋いでもいないしましてやラブホ等へも行ってない。シズちゃんの身体の俺は田中さんと歩くシズちゃんの後ろをとことこついていってるだけだ。
尾ヒレが付くのが噂というものだがー…さすがにここまで脚色ばかりだとイラつきを通り越して笑ってしまう。
苦笑いして携帯を閉じると、ちょうどシズちゃんと田中さんが汚いアパートへ入って行くところだった。田中さんが手招きをする。


「静雄、ちょっと」

「はい」

「いやお前じゃなくて…えーと、臨也だっけか」

「はーい。前にいたほうが良いんでしょ?この身体が」

「あー…悪いな」

「いえいえ?明日から迷惑かけるでしょうから」


にこりと微笑む。俺の顔なら殺人くらいできそうな素敵スマイルが作れていただろうがシズちゃんの顔ならどんなものになったか分からない。
田中さんは苦笑しながら、いくぞ、と言ってインターホンを鳴らした。


「はい」

「えーと、わかるよね。返済期限。過ぎてるんだけど」

「ああはい、出ますね」


しばらくして聞こえた声は男のモノだった。シズちゃんの仕事は借金取りで、たいていがアダルトビデオやらテレクラの料金の回収だということは知っていたから特に驚きはしなかったが、ドアを開けて出てきたそいつは俺を大いに驚かせた。
外見はふつうだ。どこにでもいそうなやせたメガネの男。そいつはドアをあけたかと思えばちらりとこちらを一瞥して、俺の身体のシズちゃんに近づいて、抱きついた。




「こっちの可愛い子のほうがタイプかな。田中さんも捨てがたいけど」




田中さんが1人で来たくない理由がわかった。

ぞわりと背筋に嫌なものが走ったシズちゃんの身体の俺は、絶叫してながら近くにかけてあったビニール傘で思い切りそいつを殴り付けてやった。奴は頭から血を流して倒れたが、抱きつかれた俺の身体のシズちゃんはそのままの体勢で固まっている。


「大丈夫!?俺の身体大丈夫!?」


ガクガクと肩をつかんで揺さ振る。シズちゃんはしばらく放心状態で、俺は必死で揺さぶり続け、田中さんはなんとか1人で回収作業を頑張っていた。












続き


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