シズイザ前提、来神捏造








「ねぇ、シズちゃんとイザイザって絶対付き合ってるよね、ねぇねぇドタチン」

渡草の運転する車で、門田、遊馬崎、狩沢の4人が池袋の街をドライブしていた時の事だった。
この前静雄がとうとう標識破壊100斬りを達成していたとかそういう噂とも事実ともつかぬ話をしていたら、紅一点の狩沢がいきなりこのような事を言いだしたのだ。
前にも同じ話をしていたため、門田と渡草の二人はさほど驚きはしなかったのだが、遊馬崎だけはオーバーにぶるぶると震えた。

「狩沢さん、まだそんな事言ってるんすかー!ギニャーっすよ、ギニャー!」
「いんや、私にはわかるよー!あれはガチだね。ねぇドタチンはあの2人と高校一緒だったんでしょ?ねー、ねーねーどうだった?そのへん詳しく」

遊馬崎はあわあわ、と漫画のようなリアクションを取りつつ青ざめる。バトンを渡された門田は少し困った顔をして「ちょっと静かにしろ」と言い、周りの視線を気にするように、窓ごしに車の走る道路を見渡した。声をひそめて、後部座席を振り返る。

「いや、俺もよくは知らないんだけどな、そんで、あくまでも噂だった話」
「…えー、なんかあるんですか」
「ほらほら、やっぱり何かあったんだー!」

渡草はまるで興味などないという風に聖辺ルリの曲を口ずさみ、遊馬崎はすこし引きつつも興味はある、と言わんばかりに身を乗り出す。狩沢の目はらんらんと輝き、門田の次の言葉を決して聞き逃さん、と体全体で聞く体制をとっている。一つの、車という小さな空間の中でも三者三様だ、と門田は少し笑って、昔を思い出しながら話を始めた。

「いや、俺があいつらの事を知ったのは1年の時なんだが、知り合いって訳じゃなくて…あいつら二人ともかなり有名だったから、なんだよ。ほら、臨也は顔が良いだろ?女子の中でもかなりの人気だったからなあ。静雄はガキの頃から、名前だけは皆知ってた。すごいケンカの強い奴がいるってな。ただ、俺もあいつらもお互い面識は全く無かったんだ。実際喋ったのは3年になってからだからな。でも臨也以外とはあまりつるまなかった。だから、俺がよく知ってるのは3年のあいつらなんだが、今と全く変わらない、なんつーか殺意に満ちた…猫と鼠のアレ、あるだろ?あんな関係だったなぁ」
「………え、でっていう!さんざんひっぱってそれだけはないよドタチンー」

言葉を切る門田に狩沢と遊馬崎が残念そうに肩を落とす。門田は助手席からミラーごしに二人を見て、ちっちっち、と指をふった。

「本題はこっからだ。こっからは本当にただの噂かもしれないんだが…やつら、一年のいつかから二年の夏まで付き合ってたらしいんだよ」

「………キ、ターーーーー!!」

狩沢のばかでかい叫びにより、渡草のハンドル操作が少し乱れる。ごつん、と窓ガラスで頭を打ったせいか、それとも衝撃のあまりか―おそらく両者であろう、遊馬崎が青ざめながら頭を抑えた。

「ま、あくまでも噂だけどな」
「やーやー、ドタチン。充分、充分!火の無いところに煙はたたないからねぇー!ああ、もっと二人のエピソードが知りたい!」

狩沢はうー、と先ほどの遊馬崎とはまた違う意味で震える。目は肉食動物のようにぬらついていた。そんな狩沢に少し引きつつ、門田は手を眼前で振る。

「や、悪いが3年からのあいつらしかまともに知らないんだ」
「ふん…そっか…ねぇ、イザイザに話聞けないかな…?」
「狩沢さあん!」

遊馬崎が狩沢の肩をがし、とつかんで揺さ振る。がくがくと揺さ振られながらも「イザイザに話、イザイザに…」と呟く事は忘れない。

「狩沢さん、ダメっすよ、まあ静雄さんに聞くよりかはマシかもっすけどー」
「えー、でも知りたいよ…ねえドタチン!お願い!イザイザに聞いてきて!」
「何で俺が!」
「だって私、ほら、イザイザなんて呼んでるけどぶっちゃけそんな絡み薄いから」
「あー、そうっすね。門田さん相手ならキレないかも」

「「ということで、いってらっしゃーい」」


遊馬崎が後部座席から助手席のドアを開けるというなんとも器用な離れ業をこなし、狩沢は門田の肩を思い切り押す。
そうして車から門田だけが降りた。否、落とされた。いつのまにか新宿駅に着いていたようだ。

「お、おい…!」

吠えてみるものの車はとっくに走り去り、新宿駅にはいつも通りの喧騒が響いていた。
普通ならここで、奴らの約束など無視して電車で帰るだろうがー…

「…あいつら」

門田は、仲間を大事にする。仲間の望むことはできるだけかなえてやりたいと思っている。だからつけこまれるのだが…幸か不幸か、臨也のマンションは駅から近い。

「…仕方ないか…」

門田はちょうど青に変わった信号を少しうらめしげに見ながら、目的地へと歩きだした。








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