nosy | ナノ
×
- ナノ -

prologue.

 ここはハーブショップ”nosy”。その名の通りお節介がそろったそこは、店の外には犬や猫が休み、裏ではプランターに色とりどりのハーブが栽培されています。世話焼きばかりなゆえに、細かいところまでサービスが行き届き、暗い顔をしたお客様も、店を出る頃には明るい顔をしている、そんなお店でした。
 そのお店に、最近通うようになった七人の高校生がおりました。世話焼きの面々は、それぞれにその珍しい客をかわいがり、いくつか悶着がありながらも、おおむね七人の高校生は、世話焼きの四人を慕っていくようになりました。

 さて、そのうちの一人、お節介をまとめる店長兼ウェイターの竹谷さんは、彼自身の性格も相まっておもてなしのプロです。今のお客様に一番ぴったりなハーブティーをお勧めしてくださったり、暗い顔をしているお客様にハーブティーを差し出しながら、ずっとお話を聞いて差し上げることも。
 さて、そんなおもてなしのプロである竹谷さんでも、たまには失敗してしまうようなこともあります。


「オレンジフラワーティーです。」

「……え。すみません、頼んでないんですけど……。」

「効果は疲労回復。蜂蜜を一滴落としました。疲れたときには甘い物がぴったりだ。あんまり根を詰めすぎないようにな。少し休憩したらどうだ?」


 にこり、精悍な顔に浮かぶのは、外にある太陽のような明るい笑みです。けれど、その笑みを向けられお客様は、かけていためがねの奥の瞳を、ぎゅう、としかめました。


「……、大きなお世話です!」


 ふい、と勢いよくそっぽを向いた彼は、そのまま机の上に広げてあったノートに向き合いました。テストが近いからでしょう、一人で勉強をしにこの店に来ていた彼は久々知兵助くん。当時高校一年生だった、高校生グループの中の一人でした。


prev / next