電車めも。
軌跡中心に。



 軌跡 ユシ←マキ

 告白というものを、初めて見てしまった。
 それだけでも十分に衝撃的だったというのに、加えて告白されていたのがよく知っている顔で。元々あまり余裕の無かったキャパシティは完全に飽和状態だった。グラウンドの隅で、立ち去るべきだと思いながらも足音が聞こえてはいけないと頭が身体を押しとどめる。動かないのは邪魔をしない為だと、決して、会話を聞くつもりではなかったのだと。
「――本当に申し訳ないんだが」
 見た目にそぐわず低く静かな声音に、告白をしたのであろう女生徒が息を呑むのが分かった。その続きが予想出来てしまうことは、あまり気持ちのいい感覚ではない。あるいはその硬い空気は、自分自身のものだったのかもしれないが。
「俺はお前を知らない。お前だって俺を、よく知っている訳ではないだろう」
「そんな、ことは」
「……ないとは言わない。だが、俺にはお前と特別な関係になる理由が見当たらない」
 女生徒は今度こそ完全に言葉を失ったようだった。不思議と冷たいとは思わなかったのは、彼の声が躊躇いを含んでいたからだ。まるでそう、傷つけまいと慎重に話すように。意外に思う。高慢な態度の貴族生徒にも、そして自分にも、高圧的で歯に衣着せぬ物言いばかりしていたから。
 例えばこの女生徒が平民の生徒で、彼が貴族にありがちな精神を以って同情しているのなら、自分は彼を軽蔑していただろう。一ヶ月ほど前の自分なら、きっとそうだ違いないと納得していた。けれどあの夜を経て、確かに思い知ったことがあったはずだった。腹に凝り固まっていた傲慢。どのような肩書きを持っていたとしても、人は主観のものさしで測れるほど薄くはない。
「……嬉しくは思う」
 その声は思いがけず優しいものだった。やめろ、と思う。そんなことを言えば、隙を覗けば。女は泣いてしまうものだと、誰かが言っていた。
(だから優しくするな)
 そう考える本当の理由は、まだ意地に押し留められている。


(範疇と蚊帳の外)


埋葬。




 軌跡 ラウフィー

 思い出を作ろうか。ささやかで他愛もないものしか、おそらく、あげられないだろうけれど。
「写真? なんで?」
「いつか我らが離れ離れになった時、この日々をフィーの大切な人に話すことが出来るように」
「……意味わかんないけど」
 オーバルカメラをひっくり返しながらの返事は平坦だ。私はとある嫉妬を持っている。だから思い出を作ろうか。『彼ら』よりずっと暖かく幸せな思い出を。
「負けるつもりはないぞ私は」
 いつかフィーが、この日々を微笑みを浮かべて話せるよう。


(さかさの四季)


自分でも意味がさっぱり。




 軌跡 アルバレア兄弟

 鼻歌が上手な人だった。小さな頃から向かい合って食事をしている時、もしくは世界について国について学んでいる時。彼は零れ落ちるように歌うことがある。
「背が伸びて少年は……うむ、ありがちだな」
「……突然何の話でしょう」
「いや、成長を謳った詩はとても良いなと思ってな」
 鼻歌の延長であるかのように軽やかに話す声は明るい。このところ気がかりがあったようだけれど、心配はないようだった。
「――少年の世界は美しい。我々よりもずっとだ」
 青年と言っても差し支えないその声が少し震えていたのを、俺は決して聞き逃さなかった。


(リトルデイズカット)


「秘密基地」めっちゃ好っきゃねん




 軌跡 リィアリ

「知ってたと思うけど、私あなたのこと好きだったの」

 相談をしたいなと、思った夜のことだ。彼女は他のクラスメイトよりも近い位置にいて、気分が沈んだ時に、一番初めに思いつく顔だった。だから自然と声をかける機会も増えた。夕食の後に二人で三階のソファで向かい合って、真面目でそれでいて気休めになる言葉をかけあって。それ自体は特に珍しいことではなかった。何も後ろめたいことは無かったはずだった。彼女がどこか緊張した面持ちで頬を赤らめながら、自分を部屋に招き入れるまでは。

「……どうして私があなたを部屋に入れたのか、その理由をあなたなりに考えてくれたかしら」

 考えない訳が無かった。扉をくぐるのを躊躇ったその一瞬で、寒気がするほど醜悪な自分を自覚したのだ。あれだけの人間にあれだけの正論を振りかざしておいて、所詮はお前もただの男なのだと責められているような。
+++++++++++++++++++++++
キリのいいとこまで行かずに断念したやつ。このあとリィンはアリサに散々罵倒される予定だった(飽きた)




 軌跡 ユシリン

 梯子から引っ張り上げた手は、不思議と冷たかった。離そうとはした。力は緩めた。けれど手袋の無い左手は妙な力で、未だ自分の左手を掴んでいる。
「は、」
 早く離さないと、不審に思われるぞ。そんな言葉は、ほんの少しの指の力に抑え込まれた。震えている。
「ユーシスがこうしてくれることを、当たり前に思う自分がいるんだ。嫉妬はそこから来る。見返りも用意出来ないくせに」
 黒髪の隙間で赤い色がちらつく。果たしてこの世で何人が、この色を正しく理解出来るだろう。人当たりがよく溌剌とした仮面の裏の。
「……見返りなら、あるだろう」
 お前がその赤を他に見せたくないという、それだけが。


(果てにゆく)


誰やねん第一作目。
表記はこれでいいのか。




 軌跡 ロイドと誰か

 写真をアルバムに移す作業が好きだった。一枚一枚拾い上げ、懐古し、それを思い出にする。懐かしいと感じる距離まで引き離す。色は無くなり音は消え、何もかもが暖かさに変換されるほどに。

「うわ、すっごい量の写真ですねー」

 肩越しに覗き込んできたのは、昨日から同室になった警察学校時代の後輩だった。ベッドの上に散らばる写真を見渡して、楽しそうに笑う。つられて頬が緩む。分かるよ。写真は笑顔が伝染する。

「先輩若いなー。これいつくらいの写真なんですか?」
「んー……三年、いや四年前かな。俺がまだ捜査官になってから幾らも経ってない頃だよ」
「ってことは先輩まだ18歳そこらですね。僕の二個下か……この四年の間に何があったんだか」

 写真を一枚拾い上げ、後輩は感心したようなうめき声を漏らす。老けたって意味かと凄んでみせると、彼は苦笑いで首を横に振った。分かるよ。それはきっと何よりも濃い四年だったから。倣って自分が摘まんだ写真には、自分以外の見慣れた友人達の姿があった。確かこれは夕暮れが綺麗だという理由だけで撮ったものだったような。夕暮れそれ自体ではなく、夕暮れを眺める横顔が並んでいる。あの日は暖かかった。風が強かった。波打つ淡い色の髪を少しだけ見つめて、目を閉じる。

 壁の色、ドアノブの感触、食器の重さ、階段の軋む音、彼等の声。今でも鮮明に思い出せるのに――懐かしい筈がないだろう。
 しょっちゅう寝不足で、忙しくて、怪我のない日は無かった。流れ星のようにあっという間で、煌めくような日々だった。暖かくなんかない。そう思える訳がない。だってまだ、何もかも近くにある。これは記憶だ。痛みも色も音もまだ覚えているんだ。

 かつて当たり前だったあの時間を、自分はまだ、思い出に出来ずにいる。


(扁平足で踏み鳴らす世界)


ちょっと前に連作書こうとして諦めたやつ




 軌跡 ♂ノエ×♀ワジ

性転換もの
捏造甚だしいです
二人とも誰おまです
R-15
下の続き

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