決意と共に、







土方side





お前は、何があっても笑ってるから
俺たちの前で、めったに涙なんて見せないから。俺たちに、何も言わないから。不安になる。お前にとって、俺達がどういう存在なのか
そりゃ、関係の大きさで、高杉に勝てるなんて、思っちゃいねー。でも、せめて“友達”として、俺達のこと頼ってくれよ。なあ、早川


俺も総悟も、お前の笑顔が好きなんだよ
だから、その笑顔が崩れるとこなんて、絶対見たくねぇ
もうずっと、長い間。お前が、無理して笑ってることくらい、分かってんだ


だから─…







旭side




ガヤガヤうるさくなった教室。でもそろそろ銀ちゃんが来る時間なだけあって、総悟くんもトシも席に着いた




『今日何時間目から来るんだろ…』

「あ?何だそれ、高杉のことか?」

『うん。今日ねー。朝から晋助、家に来てて、この─…』




この…痕のこと、なんて言うべきか否か、で、迷った。
きっと、トシも総悟くんも、怒るだろう
それに、心配をかける



…でも、
もう隠し事なんて、したくない




『あの、』




言いかけたとき、ドアが開いた。
銀ちゃんが、チャイムなる前に来るなんて、ありえなすぎる。
ところが、ドアから入ってきたのは、ヒールをはいた名前先生だった。教室が、ざわめく。


えー、何で銀ちゃんじゃないアルか どうしたんだよ、銀八先生 まあ、名前先生のがいいけど

そんなことを、思い思いに口にする3Z。




「みんな、おはよう!今日は、坂田先生風邪でお休みなの。だから、代わりに私がHRするわね」




先生がそう言ったとたん、また騒がしくなる教室(神楽ちゃん、馬鹿が風邪なんて引くアルか、は酷い)



でもなんで、名前先生なわけ?
他に、先生なんていくらでもいるじゃん。何で、寄りによって、先生
先生は、教室を見回して言った。




「えーと、来てないの、は…高杉くんだけ?」




気付くの、はや

おかしくない?何で、こんなに一瞬で気付くの。
そりゃ、3Zは他のクラスなんかより一際目立つメンバーで、構成されてるし。気付いて、当たり前かもしんないけど


心配そうに、晋助の席を見る名前先生。その態度も、そのしぐさも全部が
全部全部、晋助のこと好きなんだ、って、周りに見せ付けてるみたいで



吐き気が、する




「名前先生〜。










神威 も、」




総悟くんが、あたしにとどめを刺した。
晋助には、気付いた。神威くんには、気付かなかった、




「あ、あら!そうね、神威くん………も」




名前先生は焦って、付け加えたみたいに、言った。

何、その態度

何か、胸から熱いものがこみ上げてくるようで、あたしは、みんなに見えないように、スカートの裾をぎゅっ、と握った。





「じゃあ、これでHR終わります。






あと、早川さん、すこし来てくれるかしら?」




は…?
あたし、呼び出し?訳わかんない。ここで、言えばいいじゃん。
まあそこは、優等生のあたし。文句も言わないで名前先生についていく。




「早川…行く、のか?」

『うん』




トシが、心配そうに話しかけてきてくれる

でも、行かなきゃ。逃げてる事と、一緒じゃない?




『名前先生?』

「あの…早川さんに、頼みたい事があって…」

『何ですか?』




出来るだけ、笑顔で。それもいやみな感じたっぷりな
名前先生は、相変わらず綺麗で、

でも、心の底から、否定したい 汚さがあって




「朝から、ね。高杉くん。電話が繋がらなくて」

『、は?』




 な んなの、この 人
晋助に電話が繋がらないなんて、あたしに言われても困るんだけど




「それで、早川さんに伝言、頼みたくて」

『伝、ごん』




何であたしが、なん、であたしが
そんな、橋渡しみたいな、2人の事応援するみたいな、ことしなくちゃいけないの。
やばい、やばい。すごいわけわかんない。

何がしたいのよ、この人




「なんで、旭なんですかィ」

「それ、は早川さんと高杉くん、仲いいでしょ?だから……」

「そんなの─…」

『総悟くんっ、
 分かり、ました。伝えます』




分かった。伝言でも何でもするから。
はやく、目の前から消えて

吐き気がする、 どこの会社のか分からない香水の匂いも、晋助のこと想って見せるその顔も、全部が




「本当!?有り難う。あの、じゃあ、











今日の夜、6時に神社に来て…って、言っておいてくれない?」




頭を、何かで殴られたような気がした。

あ、だめだ。もうだめ。何それ何それ何それ なに よ、それ。生徒使ってデートの約束?
ありえない、こんなの




『は、い……』




目頭に、涙が溜まってくるのが分かる。

…やだ、泣きたくない
こんな人に、泣かされるなんて、やだよ




「名前先生、1時間目、始まるぜ」

「あ、そうね。有り難う、土方くん」

「いえいえ」




トシ、顔笑ってるけど、目が笑ってない。
いつも以上に瞳孔が開いて、"さっさとどっか行け"って、目してる。

名前先生は、少し早歩きで、教室を出て行った。




「何なんでィ、ありえねぇ!」




総悟くんは、机を蹴飛ばして、今にも痰を吐きそうな勢いで言った。



名前先生、は

あたしが、晋助のこと好きだって知ってて?知っててわざと、伝言頼んだの?




「高杉は、何であんなヤツのこと好きなんだ?それより………早川」

『な、に?』

「早川…。お前 今高杉に会って、そんなこと泣かないで言えんのか?」


『………無理だろうね』




むりだ。むり に、決まってる。
何でそんなこと言わなきゃいけないの?

何で、あんたの恋なんて応援しなきゃならないのよ
何で、あたしばっかり泣かなきゃいけないのよ




なん で、あたしはあんたのこと、好きなのよ
なんて、答えも返ってこない質問。考えても、意味無いよね




『あたし………1時間目さぼる』

「は、 ちょっ、待て!早川!?」




トシの制止する声も無視して、教室から出る。
1時間目、社会か



ま、服部先生だし、いいや

そんなこと考えてると、肩を掴まれて、後ろを振り向かせられる。




「旭、どこ行く気なんですかィ」

『え………と』




そう言われて、返す言葉もないあたし。
はっきり言って、行くあてもない。屋上は不良がたむろしてるし




『国語、準備室』

「…銀八がいねーのをいい事に…」

『胎、くくってくる、から』

「「は?」」

『だから、慰めたりしないで』




あたしの気持ちを伝える。
"頑張れ"なんて、言ってやらない。今までもこれからも、頑張れなんて思ってやらない。

好きだ、って、言って
それで、


晋助の、びっくりした顔見てやる

言ったあとは多分泣く、けど


絶対泣くけど




『泣いてても、慰めないで』




惨めになる、自分のやった事が。
どれだけ無謀か分かってて、言うんだから

どんな顔するんだろう、あたしが、好きって言ったら



何て言って、断るんだろう
"友達"だとしか思えない、なんて、ドラマみたいなこと言われたりして




「早川





後悔、しねェんだな?」

『うん、しないよ』




しない。絶対、言い切る




「ん………。なら、思いっきり、笑って迎えてやりまさァ」

「行ってこい、早川」




ありがとう、2人とも。これで、終わるから
これで、迷惑かけるの最後だから





決意と共に、
(これが、最後の涙)









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