満月で狼に変わる
 

部活終わりの体育館前。
もう空が深い青に包まれて静かに空気が流れる頃。

1つの明かりがつく部室を除き笑い声が光と共に漏れている。


(着替え中も皆元気だなあ)

部活が終わった後、彼氏が着替えを済ませるのを待ちながら体育館前にしゃがみこむ黒尾は船をこぎつつも睡魔と戦っていた。


(静かで暗くて…気持ちいい)


たった数分で重たい瞼が開かなくなる感覚に襲われ簡単に意識を手放すと静かに夢の中に落ちていった。


――

バレーボール部、部室

「うっし、着替え終わったんで先、失礼します!」


「「「お疲れー」」」

「おー今日もノヤは着替えはえーな!」

「おう、黒尾が待ってっからな!」


ニシシッと笑う烏野元気印、西谷は部活後にも関わらず覇気のある声をかけ一番に部室を飛び出した。
階段を駆け下りて体育館前に待つ黒尾の元に向かうと小さくうずくまる影が見えて声をかける。


「黒尾帰んぞー!」


数秒シーンとした間が流れ不思議そうに首をかしげながらうずくまるそれに近づくと規則正しい寝息を零しながら眠る彼女が目に入った。

西谷は見下ろすように黒尾の前に立つと不意に鎖骨と胸元がちらつき一歩後ろへたじろぎながら口元を抑えては(無防備すぎだろ)と視線をそらす。


頬を染めた彼だったがしゃがみこみ寝ている彼女の顔を覗き込むと白い肌に影がかかり艶美さにドクンと心臓が高鳴ったのがわかった。
そして静かに上から下へつらつらと視線を落とす。


(顔小せえ、白い、細い、なんか…すんげーいい匂いする)


じっと見つめていると少し肌寒かったのか鉄朗がふるっと体を震わせ暖かい息は吐きほんの少しだけそれは白い吐息へと変わった。


(これはもう無防備なこいつがわりー)


西谷は地面にに手をつくと静かに彼女の頬に唇を触れさせてチュッとリップ音をたて名残惜しそうに離れた。

すると触れた温度に気づいたのか黒尾がゆっくりと瞼を持ち上げ首をかしげながら西谷を上目遣いで見上げ視線が絡む。


『ん、あれ…』

「お前無防備すぎだ。俺じゃなかったら襲われっぞ」

『ごめんね?起きるまで待たせちゃったね』

「いや、待てなかったけど」

『?』


西谷の言葉の意味に気づかない黒尾は小首をかしげながらじっと見つめては疑問符をしばらく浮かべていた。







満月で狼に変わる



「今度からうたた寝すんなよ!絶対に!」

『何で西谷さっきから顔赤いの?』

「う、それは、気にすんじゃねえ!」

『変な西谷〜』

「(はあ、胸でかくてびびったぜ)」


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