4部 short小説 | ナノ
悩みを吹き飛ばせ! 1/3
突然だが、最近私が頭を悩ませている事を聞いてほしい。
世間では幸せな悩みだと笑い飛ばされるだろう。
はたまた、睨まれてしまうかもしれない。
しかし、ゆきにとってはとても深刻な悩みなのであった。
これはある日の朝の事。
「あれ、ゆきさんじゃあないっスか!偶然ッスね!!」
そう私に話しかけてきた、一見不良に見える男子高校生の東方仗助くん。
なんと花も恥じらう高校一年生である。
「お、おはよう仗助くん…」
ゆきは、引き攣るほっぺたを無理やりあげて挨拶を返す。
この東方仗助くんこそ、私を今最大に悩ましている元凶なのだ。
「いや〜なんつーか、今日も朝からゆきさんに会えるなんて、いい日になりそうっス!」
「あ、あらそう?…それはよかったわ。」
まるで仗助が犬であったなら、それはもう勢いよく尻尾を左右に振り回しているであろう笑顔で言ってくる。
しかしゆきは知っているのだ。
彼の家は、ぐるっと回った反対側にある。
彼の通う高校は彼の家と同じく、ぐるっと回った更に先。
自惚れている訳では無いのだが彼は、遠回りをしてまでも毎朝私に会いに来るのである。
一方で私は普通の会社員であり、もう高校なんて卒業して何年経つのかしら…と、数えるのは嫌になるぐらいには、彼とは結構な年の差がある。
「ゆきさん、会社こっちっスよね?…俺もこっちなんで、一緒に行かないっスか?」
弾けんばかりの笑顔でこう言われると、断れないのである。
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