ラッキーハプニング 1/3
「うえぇぇ、なんでこーんな汚い場所に寄越すかなぁ・・・ブチャラティは。」
ゆきはやれやれ、といった様子でブツブツ呟きながら小汚い廃墟を歩いていた。
そこはすっかり荒れており、かつて住人が使用したであろう家具や食器達がところ構わず転がっていた。
先に進むゆきの後ろを、追い掛けるようについて行くフーゴの足下に転がるイスも、かつては大切に使われていたのだろうか。
フーゴが軽く蹴り上げると、埃を巻き上げながら粉々にそのイスは砕け散った。
ゆきとフーゴは、ブチャラティに与えられた任務をこなすためにこの廃墟へ訪れていた。
しかしどうやらここも、めぼしいものはなさそうでフーゴは溜め息をついた。
「・・・どうやらここもハズレのようですね。」
「いやいやパンナコッタ・フーゴ君。諦めるのは少し早いんじゃあないのかしら?」
チッチッチと、人差し指を左右に振りゆきはフーゴに語りかける。
その様子をフーゴは訝しげに見つめた。
「ゆき、君のその何事も諦めない精神は尊敬に値する。・・・だけどだ。こんな廃れた場所にどう考えたってブツがあるとは思えない。」
フーゴは髪をかき上げ、ゆきに向かって言い返す。
「も〜フーゴってば固い!考えが固すぎるよ!・・・もしものもしも、1%でも可能性があるんだったら隅々まで探さなきゃ!」
そういってがさがさと、また文句を言いながらゆきは廃墟を捜索し始める。
フーゴとゆきは、ブチャラティに誘われパッショーネに入った時期がほぼ同じということもあり、よくペアを組んで行動していた。
フーゴ自身もゆきの事は嫌いではなかったし、一度決めたことは絶対曲げないくせに意外と常識人なところが気に入っているのだった。
「はいはい・・・分かりました。そこまでゆきが言うんだったら、もうちょっとだけ探しましょう。」
そう言って、フーゴもぐちゃぐちゃの廃墟を手探りで掘り起こしていく。