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「ただいま・・・」
「お帰りー。ご飯出来てるわよー。」
「・・・うん、後で食べる・・・」
「お姉ちゃんどーしたのー?」
「夏ちゃん・・・何でも無いよ、後でね・・・」
「?」

自室に戻りばふっとベッドに突っ伏す。

何か頭が混乱している。
ちょっと、整理しよう整理!!





まずお昼ご飯は近くのファミレスへ。大地くんめっちゃ食べる。食べ方が豪快である。
リスみたいに頬がまん丸になっててくっそ可愛いかった。逆にお前そんだけで足りんのか?!ってびっくりされた。・・・いや部活やった訳じゃ無いんだからこんなもんですよ・・・。
食べながらも話題はつきない。部活の話や、進路の話。

結局私は普通に大学へと進む事にした。自身の学力に似合った所だ。教育学部に進もうかなぁと。
小学校や幼稚園の先生とか、そうゆうのになれればなぁ、なんて思ったのだ。まぁ、教職の国家資格は取得出来るに越した事は無いしね。

「・・・大地くんは大学どこにいくの?バレー強いとこ?・・・東京とか行くの?」
「ん、いや、残るよ。大学は、まだ迷い中。さちは?」
「私もこっち。教育学部に進もうかなって。」
「へぇ。学校の先生にでもなるのか?」
「ん、まだわからないけどね。でも大地くんの方が学校の先生似合いそう!バレー部顧問とか。」
「・・・そうか?」
「うん、絶対似合うと思うよ!翔ちゃんとかもだけど、中々の問題児が多いけど凄く纏めてるし慕われてるし、統率力があると思う。で、烏野に戻ってきて顧問になるのがいい!ってゆーか似合う!!」
「褒めすぎだろ。唐揚げはやらんぞ。」
「あははっいらないし!」

でも、似合うと思うなぁ先生。
・・・モテそう。いや間違い無くモテるわー。
そんな話をしながらご飯食べて、近くの図書館へ移動した。
ここの図書館は4人掛けのテーブルがあり、パーテーションので区切りがあって他の人も気にならないし、静かで涼しい。
人気があるから座れ無いかも、と思ったけどちょうど空いた所だったようで運良く座る事が出来た。そこで勉強する事数時間。会話なんて、1時間に1回「これわかる?」「あーこれは・・・」ぐらいなもんですよ。勉強ですしね。


・・・ところが。

私は運が悪いらしい。


「・・・澤村?」
「?お、道宮。偶然だなぁ。」
そこに居たのは、道宮さんともう一人、・・・確か女子バレー部の子だ。・・・名前は知らないけど、茶色い髪にポニーテールの子。

澤村を見つけた時はパッと笑顔が溢れた道宮さん。私が居ることに気付いて、驚いたように目を開き、一瞬悲しそうな目をした。私は私で、作り笑いをするしか無かった。道宮さんの友達は、ハッキリとした嫌悪感のようなものをこちらに抱いているらしく、眉間に皺を寄せ何でアンタがここにいるの、という視線を向けてくる。まぁ、道宮さんの友達からしたら彼女は長い間澤村が好きで、両思いになる事を願っているんだから当たり前だ。
「ーーいいよな?」
「っ、え、ごめん何?」
「おいおい寝るなよー。道宮達、席無いんだって。一緒でいいか?」
「!あ、いいよいいよ是非是非!」
「ごめんね日向さん、甘えちゃいます!」
物思いにふけっている間に、一緒に座ることになったらしい。バタバタと出しっぱなしにしていた教科書類をカバンへ戻す。私の隣には道宮さんのお友達ーー相原さんというらしい、その子。澤村の隣には道宮さん。彼女達は進学クラスでは無い。と、いうことはまぁ、そうですよね。
「澤村ここわかる?」「これは?」「えっじゃあさ・・・」


・・・わかってたけど、中々辛いものがある。

それと、さっきから中学時代の話をする相原さん?いやーすごいなぁ。この子、本当に道宮さんの事応援してるんだろうなぁ。で、よっぽど私が気にくわない、というところか。分かりやすいなー。逆に道宮さんの方が私がわからない話題なんじゃ、とチラチラ見て気にしてくれてる。・・・良い子だなぁ。目があうと申し訳無さそうにするんだもん。にこりと笑って気にしてないよと無言で伝えて、勉強に集中するフリをする。
だけど・・・。

私は意気地なしだ。こういう時、どうしても自分は異分子だと思ってしまう。本来は居ない人間。まるで、1人隔離された空間にいるようで。・・・叶うはずが無い想い、と。まぁ叶う叶わないの前にそういう対象に見られて無いケド。それでもやっぱり、こうして仲の良い所を目の当たりにするのは、辛い。


・・・駄目だな、これは。





「・・・私、そろそろ帰るね。」
「え、」
ガサりと、ある程度片付けてた問題集や教科書をカバンにしまいながら言う。
「・・・ごめんね、お先です。」
「っ待て待て、送るから」
「いいよ、そんな遅い時間じゃないから。今日は付き合ってくれてありがと、また学校でね。」
「ちょ、っさち!」

そのまま大地くんの顔を見る事なく席を立ち、小走りで図書館から出て、ようやく大きく息を吐き、とぼとぼと歩き出す。
はー・・・顔、見れなかったな。上手く笑えてたかな。変に思われて無いかな。・・・あんな態度で帰るなんて、・・・って怒らせるような態度をしておいて気にするとか・・・勝手な奴だな、私。

「さち!!」


え。




ピタリと足が止まる。ゆっくり振り向くと、大地くんが走ってこっちに向かって来るではないか。
なんで、どうして?なんて思ってるうちにすぐに追い付かれ、はぁ、と少しだけ息を切らした大地くんが目の前に。

「・・・さち?」
「・・・なんで?」
気付くと勝手に口が動いていた。

「?何が」
「なんで追いかけてくるの?」

大地くんは、眉間に皺を寄せている。
私は、どんな顔をしてるんだろう。笑え、笑わなきゃ。

「・・・どういう意味だ。」
「・・・道宮さんがいる時は、気を使わなくていいんだよ。一緒に居たいでしょ?」
「は?」
「大地くんは、優しいね。・・・でも、いいよ、こんな風に優しくして貰ったら・・・・・・期待、しちゃうから・・・。一人で帰るよ。」

そのまま背を向けて歩きだす。と、思ったらパシリと腕を掴まれた。

「・・・送る。」
「っ!」

そのままスタスタ歩き出す大地くん。引っ張られるようにして私も歩きだす。

「・・・いいよ、離して。」
「嫌だ。」
「大地くん・・・」


どうしてだろう。どうして彼は私に構うんだろう。そんなに心配なのか。そんなに、子供だと思われてるのかな・・・。



そのまま大地くんはバスに乗った。わざわざ家まで送ってくれるという事だろうか。その間、 何度か話しかけようとしたけど、ずっと眉間に皺を寄せたままで・・・怒ってるのか、何なのか分からない。こんな大地くんは、初めて見る。・・・やっぱり怒ってるのかな、私、勝手な奴だし。

結局、自宅近くまで送ってくれた。
「・・・ここ、ウチだから。」
「・・・」
「あの、離してくれる・・・?」

大地くんは、まだ腕を離さない。

「大地くん・・・?」

一瞬、手に力が入ったと思うと、真っ直ぐに目をみて、



「なぁ、俺、好きな奴がいるんだけど。」




ひゅっと息を吸う。
ぎゅうぎゅうと、胸が締め付けられる。頭が真っ白になった


なに、なんでこんなこというのなんでわたしにいうの


「・・・知ってる」
「いや、多分お前は知らない。でも、俺は今告白するつもりは無い。まだ、自分に自信が無いっていう事もある。それに、部活も大事な時期だ。忙しくなるしそれどころじゃ無いからな。」



ききたくない



唇が、震える。手が、震える。



「・・・やめて」

「春高、出場する事が出来たら自信もつくと思」
「聞きたくない」

「・・・聞けよ」

「嫌だ聞きたくないよもういい、もういいからっ・・・お願い、だから、もう言わないで・・・」

ぐっと腕を引かれたと思ったら今度は両肩を掴まれた。


「いいから聞いてくれ!お前に聞いて貰わなきゃ意味無ぇんだよ!」


ぼろぼろと涙が出てきた。
なんだこれ、なんでこんな事になってるんだ
私は、わたし、は、

ふるふると首を振りながら、ぎゅっと目を瞑る。
死刑宣告を待つ囚人の気分だ。










「春高の宮城予選、全部勝って、優勝出来たら言うから、だから、それまで待ってて。誰のものにもならないでくれ。」













「・・・さち」







指の腹で涙を拭われる。
ゆっくり目を開ける。


「・・・え、?」



いま・・・





「俺は今すげー恥ずかしい事を言ったからな!二回言うとか無理だ!」


何じゃそりゃ!思わず大地くんの顔を見ると、・・・あ、ま、真っ赤だ・・・しかも目が泳ぎまくっている・・・!


見た事が無い表情過ぎて、ふ、と笑ってしまった

「あ、の、言う相手「間違ってねえよ」


あぁ、私の好きな、優しい目だ。

「・・・うん、やっぱりさちは、笑ってる方がいいな。」


「・・・泣かせたのは、大地くんだよ・・・」

「あー、それは、すまん。」

頬に触れている大地くんの手を、握る。

「・・・ふふ、あったかいなぁ、大地くんの手・・・」

「勝手な事ばっかり言って悪い。でも、もう少し待ってて。」








もう、いい。

これからどうなるかわからない。正直、道宮さんの事は気になるし、自分が異分子な事も気になる。不安ばっかりだ。ネガティブに考える事もある。数ヶ月先の事だから、もしかしたらその頃には彼の気持ちが変わるようや出来事があるかもしれない。
けど、もういい。


だから、信じよう。
大地くんの言葉を。

だってこんなにも好きなんだ。
全部、全部好きなんだ。









未来は誰にもわからない。けど、私はきっと、ずっと好きだ。それだけは変わらない。





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