これの続き

真緒くんはいつも私の隣にいた。中学生の頃は付き合ってるんじゃないかだなんて噂になるぐらい。真緒くんとは1度もクラスが一緒になったことは無い。いや、それは嘘かも。幼稚園とか、小学生の頃はあったかな…?記憶はあんまり定かではないが世話焼きが趣味、みたいな彼は常に私か凛月くんの世話を焼いていた。私はあれを1種の病気だと感じている。

「名字、一緒に帰ろうぜ。」

最近いい感じになってきている同じクラスの男の子に声をかけられると私はとびきりの笑顔を作って返事をする。私は衣更真緒から逃れたかった。次第に家に帰らなくなったし帰っても遅い時間だった。両親も帰りが遅いので丁度いいぐらいで、バイトも始めてお金にも困ってはない。ああ、これで自由だ、とは思うけど私が自由になればなるほど真緒くんからの着信は増えていったし凛月くんからも度々メッセージが来てた。真緒くんがおかしいけどなんか知らない?との事だか何も知らない。
肩が触れるか触れないかの距離で並んで歩く。私達はもどかしい距離の男女に見えるだろう。私はきっとこの人もお付き合いをして先に進んでいくんだと思う。そんな強い予感を感じていた。家に送ってくよ、と言われるとはにかんで お礼を述べる。頬を染めた彼はとても可愛かった。この人は私を束縛しないし、お世話もしない。

「あ、」

家の前に居る人影に私は背筋が伸びた。あれは真緒くんだ。私を視界に入れた虚ろな目は恐ろしかった。

「だれ、そいつ。」

「同じクラスの人。」

じ、と真緒くんが私の隣を見つめている。彼は真緒くんに負けて じゃあな、と逃げるように帰ってしまった。馬鹿意気地無し、立ち向かって私を自由にしてよ。

「……なんで最近会ってくんないの。」

「真緒くんと高校同じじゃないし忙しいかと思ってたし幼馴染がベタベタつるむ歳でもないでしょ。」

「名前」

真緒くんが両手を広げた。私は心では拒絶をしてた。でもそれを覚えてる脳内は簡単に真緒くんの両腕に体を埋める。

「居なくならないで」

だから嫌だったのだ。この声を聞くと私は自由を簡単に手放してしまう。か細い私を求める声。

「……( 可哀想な人だ )」

真緒くんに腕を回した私はどっちが可哀想なのか分からなくなった。飛び方はもう忘れた。