「おもい……」
寝起きの掠れた声で呟きながら、私はゆっくりと目を開いた。大きな岩に押し潰される夢を見て自然と目を覚ましたのだが、実際に私の上に何かが乗っているらしい。使っている布団はこんなにも重かっただろうか。不思議に思っていると、耳元から誰か他の人の規則正しい寝息が聞こえた。
「え…?ちょ、晋助っ……?」
私を押さえ付ける何か、とは晋助の腕だった。お腹にきつく絡み付くそれからは簡単に抜け出せるはずもなく、起き上がろうとしていた私は仕方なく頭を枕に戻す。ちらりと視線を向けた晋助の寝顔は残念なことに前髪で隠されてしまっていた。
周りの様子を確認してみたが、間違いなくここは私の部屋。しかも、晋助は用事があるとか言っていたから、昨夜は私一人で布団に入ったはずだ。なのにどうして晋助はここにいるのだろうと眉間にシワを寄せて考えていると、いかにも不機嫌そうに片目を開いた晋助が、うるせェとこちらに言葉を投げた。
「あの…、晋助…?」
「あ……?」
「どうしてここに居るの…?」
「ん……」
「晋助くーん…?」
何度も呼び掛けても、彼の口からは起きることをぐずっているような低い声しか出てこなかった。まるで子供みたいだね、なんて言ったら怒られてしまうだろうか。言ってしまいたい衝動をなんとか堪えつつ、晋助の頬に指先をそっと伸ばした。
「私ね、もう起きなきゃいけないの。だから、この腕をどけて?」
「却下……」
「は……?」
もう一度問い直してみるも、それに対する返答はなく、その代わりお腹に絡み付く手により一層力がこもって、晋助は私の首元に顔を埋めるように布団のさらに奥へと潜りこんでしまった。
たぶん、ここまで大人しい晋助は国宝級の価値があるんじゃないだろうか。こんな晋助も悪くないと思いつつも、やはり、どうしてしまったのかと心配になってしまう。
「晋助……?」
「ん……」
「今日は何だか変だよ…?」
「疲れた……」
「え……?」
「だから、どうしてもテメェに会いたかった……」
文句あるか?と、不敵な笑みを作った顔でこちらを見た晋助は、驚きから硬直してしまった私の唇を強引に奪うと、先程までとは逆に、自分の胸の中に私をきつく閉じ込めた。今日は離しちゃやれねェ、なんて言われてしまえば、高鳴る心臓のせいで、反論をすることはおろか息をすることまで、できなくなってしまいそうだ。
私が大人しく胸元に顔を埋めて頷いたことに満足したらしい晋助は、軽い口づけを耳元に落とした数分後に再び規則正しい寝息を立て始めた。それを聴いていた私も、彼の温かさに包まれながら段々と重くなってきた瞼をそっと閉じた。
山盛りシュガーの夢の中
2人で同じ夢、見られるかしら?
Fin.
2周年記念リクエスト2つめは、SAKUЯAさんからいただいた「目が覚めたら、なぜか布団の中に高杉がいて、甘えてくる」でした。高杉が甘えてくる小説なんてほとんど書いたことがなかったので、この機会に挑戦したいと思い、このリクエストを選ばさせていただきました。
私の中では、胸やけするほど甘くしたつもりです(笑)いかがでしたでしょうか?
SAKUЯAさん、リクエストをありがとうございました!
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