これの続き



「送ろうか?」
「要らない、ハゲ!」
「…いや、だから…」

バタン。
アーサーの申し出を断ってシュラは彼の部屋を後にした。酒とそのせいで吐き出した弱音が重い。何だって自分はあんなことを。

「…シュラ」
「!な、メフィスト」

突然声を掛けられてシュラは勢い良く振り返る。どうやら今日は故意ではないらしい。メフィストは目を丸くしてシュラとアーサーの部屋の扉を見比べている。そしてはあ、と盛大にため息をついた。

「私が上に呼ばれて絞られている間にあのクソ聖騎士…」
「は?」
「おや、髪から奴の匂いがする…」
「えっ」
「…何をしておいでで?」

酒のせいで曖昧だが、アーサーにみっともなく縋ったのは確かだ。下を向いて悪態をついているとメフィストは不機嫌そうな顔でシュラを見下ろした。

「不愉快だ」
「、お前が何を」
「あなたは鈍い。それに無防備だ」
「メフィスト」

「…ああ、今大方分かりましたよ…。シュラ、あんな男に縋らなくとも、私なら死にません」
「あ、」

メフィストには何でもお見通しらしい。それなのに彼の瞳にはいつもの余裕が無い。いつもなら半笑いでからかうように言っているだろうに今日は何だか必死のようだ。

「私は悪魔ですからね。それも超一級の」
「…お前が裏切らない保証なんかどこにもない」
「けれど死なないという保証はありますよ?少なくともあの男よりは。何なら今から奴と戦って証明して差し上げましょうか?」
「…てめえ」

いつもより装飾が抑え目な服はどこか違和感がある。帽子もない。このままでは異変に気付いたアーサーが出て来かねない。そうなったらもっと面倒なことになる。シュラはメフィストを引っ張って廊下の端まで走って行った。

「何ですか」
「これ以上面倒事はごめんだ」
「はあ」
「何だってお前もあいつも私にそんなこと言うんだ、もっと言うべき奴がいるだろうが」
「誰です?」
「…恋人とか…」

恋人ですか、とメフィストは穏やかな笑顔を浮かべた。こんな顔も出来るのだなとシュラは少し感心した。

「やはりあなたですね」
「は?」
「とにかく、不安になることはありませんよ」
「…………」

私は死にません。そして多分あの男も。メフィストはシュラの手を掴みぎゅうっと握った。どうして今日のこいつは変なんだ?いつもなら悪戯を企む子供のような目をしているのに。不思議に思いながらシュラはメフィストについてゆく。

「…どこ行くんだ」
「帰るんですよ、日本支部に」
「…ああ」
「せっかくですから送って差し上げますよ」
「………ん」
「随分酔っているようだ。今日のあなたは何だかおかしい」
「お前に言われたく、無い」
「はは」

何故だかメフィストの手を振りほどく力が出なくてシュラはおとなしく歩いて行った。ああ多分こいつはこいつなりにあたしを心配してくれたのか。そう思えばなんだかメフィストが人間ぽく思えてきておかしな感じがした。


(口約束でも良いから、欲しい)

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メフィシュラ美味い


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