彼女はいつから自分の下についたのだったろうか。最初から礼儀の無い女だとは思っていた。けれどそれでも目が離せなくなるくらいには気になっていたらしい。

「やあ、シュラ」
「…アーサー。何か用か」
「良い酒を手に入れたんだが…飲まないか?」
「酒っ!?」

何とまあ扱い易い。不機嫌そうな顔をしていたのに簡単に付いてきた。部屋に入るとすぐ酒をねだってくる。気まぐれなくせになつきやすい所が何だか猫っぽい。

「美味いにゃ〜」
「…本当に酒が好きだね、君は」
「好きだ!」
「、はは」

顔を赤くしてくねくねするシュラを眺めていると面白い。こうなると次第にリミッターが外れ出すのだ。そこからしばらくの時間シュラと酒を飲み交わした。彼女は良く分からない悪口のようなものを延々としゃべっている。まったく男と一対一だというのに警戒心が無いのか、しまいにはベタベタとくっついてきた。

「…シュラ」
「にゃははは〜アホーハゲー!」
「何度も言うが私は禿げてなどいないよ」
「スケベ〜セクハラっ!」
「誤解を招くようなことは言わないでくれるか!」


「…どうせみんなあたしを置いてくんだ」
「…ん?」

今、何と?置いていく…?突然静かになったシュラは何故だか哀しそうな顔をしている。「シュラ?」と問い掛ければ彼女はぴくりと反応した。

「獅郎はあたしを置いてった…あのジジイ…っ」
「シュ、ラ」
「聖騎士なのに、一番強いはずだろ!それなのに……どうせアンタも私を置いてくんだ」
「…何を言ってるんだい?」

聞き分けの無い幼い子供のようにシュラは続ける。今まで吐き出した事の無かった弱音、死への恐怖。上一級祓魔師とは言ってもまだ30にもなっていない女なのだ。尊敬していた師の死が彼女に影響を与えていたとしてもおかしくはない。

「シュラ、私は君を置いてなど行かないよ」
「獅郎もそう言ってた」
「……君は」
「…………」
「ずっとそんなことに怯えていたのかい…?」

シュラの頭に手を添え、そうっと自分の胸に押し付けた。細い手が胸板に触る。こんなすぐにでも折れそうな身体で大きな恐怖と戦い、魔王の子の事を任され、壊れそうになりながら生きてきたのか…?

「離せ…ハゲ」
「だから禿げては…」

「死なないで」
「……、」
「もう、周りの奴が居なくなるのはたくさんだ」
「ああ」

約束するよ。私は死なない。君をこんな風に哀しませたりはしない。
ぽんぽんと背中を叩くと、シュラは寝息を立てていた。ああ、まったく。これだから私はこの部下から目を離せないのだ。


(骨のない柔らかな傷痕)

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メフィシュラもありですが、アサシュラもありだと思います。最終的に獅←シュラ←アサ・メフィ ですね。獅郎無双。

title:ごめんねママ




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