キミとのセカイ15




ある日曜日の夕方頃、アルヴィンがバイトに行っているうちに掃除機でもかけようかと思ったちょうどその時。
ぷるるるるという携帯の発信音に誰かと思ってみたらローエンと名前が画面上に出ていた。
えっ、ローエン!?とちょっとびっくりして、でも急いで電話に出る。

「は、はいもしもし」

『もしもし、ジュードさんですか?』

久しぶりに聞いた懐かしい声に僕はなんだかホッとするような、何とも言いがたい気持ちになった。

「はい、ローエンどうしたの、急に電話なんて」

『ようやく時間が空いたのでジュードさんはどうしているかと思いまして。
 そちらはおそらく今夕方くらいでしょうか?』

「そうだよ、アルヴィンはアルバイトに行ってるから掃除機をかけようと思っていたところだったんだ」

『それはそれは…あの家にも掃除機なんてものがあったんですね』

ちょっと前の僕と同じような事を言うローエンについ笑ってしまった。

「あはは、それ実は僕も同じこと思ったんだけど、探してみたらなんと炊飯器までちゃんとあったんだよ。
 最初は色々…ほんとどうしようかと思ったけど、今では快適に暮らせているよ」

だから心配しないで、という僕に「それは安心しました」というローエンの声が続いた。
その口調から、電話越しにもローエンがほっとしているのがわかる。
やっぱり置いていってしまったことをとても気にかけてくれていたのだと思うとなんだか心が温かくなった気がした。

『アルヴィンさんはとてもいい方なのですが、その、家事が苦手だと公言しているくらいなので少し心配していたんですけど、それも杞憂に終わったみたいですね』

「確かに、アルヴィンに家事を任せるとかえって仕事が増えるだけだから僕が担当しているんだ。
 でも家事は慣れてるし嫌いじゃないから全然苦痛じゃないよ、特に料理とかは楽しいくらいだよ。
 作った料理を美味しいって言ってくれるのがとても嬉しくて。」

そんな感じでしばらく会話を続けていると、ガチャリと鍵をあけた音とともに玄関の辺りからただいまーという声が聞こえてきた。
僕は電話を少し耳から遠ざけるとおかえりなさいと返事を返す。
そうしてまた耳に当てると

『ではアルヴィンさんもご帰宅されたみたいですし、そろそろ電話を切りましょうか』

というローエンの声。

「え、アルヴィンと話しなくても大丈夫なの?」

てっきりアルヴィンとも話をするんだろうと思っていた僕はちょっと驚いてそう尋ねる。

『えぇ、今日はジュードさんの様子を伺うために電話をしただけなので。
 元気そうで本当に安心しました。
 それでは今日のところは失礼致しますね。
 アルヴィンさんには宜しくお伝えください』

そう聞こえた後、ぶちっという音がしたかと思ったらつーつーつーという電話の切れた音が聞こえてきた。
しばらく電話を持ったまま突っ立ってると、アルヴィンが部屋の中に入ってくる。

「あれ?どうしたのジュード君、電話持ったままぼーっとしちゃって?
 もしかして電話中だった?」

「うん、いまローエンから電話があってちょっと話をしてたんだ」

「へぇ、ローエンからねぇ。で、なんて?」

「僕の様子伺いみたいな感じだったよ。
 アルヴィンとは仲良くやってるから大丈夫だって答えておいたよ」

「むしろ俺としてはジュード君のおかげで快適な暮らしを満喫させてもらっているようなものだからね。
 その点ジュード君を貸してくれたローエンには感謝しないとな」

そう言って笑うアルヴィンに僕は物じゃないよって言い返しながらもつい釣られて笑ってしまった。


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