半宵_1

※「木島くんと先輩」の続編です


ぼうっと眺めていたメニュー表から顔をあげると、タイミング良く先輩から「次どうする?」と聞かれた。

新年あけて、クリスマスから続いていた浮かれモードがやっと鎮静化されてきたような雰囲気を感じる頃。あまり集まりのないバイト先では珍しく、新年会などという単語が出て、日曜の夜に数人で集まっている。安居酒屋の割には個室で、そこそこ飯もうまい。

「あ……じゃあファジーネーブル」
「女子かよ」
もっと飲め木島ぁ、と隣に座る同期から絡まれる。
片手に持ったジョッキをうりうりと押し付けられるが、俺はビールがどうにも得意ではない。たまの飲み会でも、ジュースのようなものばかり頼んでいつの間にか出来上がっている感じだ。

「木島は甘いの好き?」
「まぁ、そうっすね。割と。」
「俺のココナッツミルクなんだけど、美味しいよ」
飲んでみな。そういってグラスを正面から差し出される。氷が見え隠れする白っぽい液体を喉に流し込むと、控えめな甘さにふわりと南国の香り、ほのかなアルコールの感じ、そしてミルクのまろやかさが広がった。
「美味しい」
「でしょ。タピオカ欲しい」
「あーわかります」
さっきこれ頼めば良かったな。俺は少し悔やんだ。

揚げ物の油をオレンジとピーチでさっさと流し込んで、次のドリンクを頼む。料理がないとあまり飲めないタイプの俺でもこれは割といけるほうのようで、次々とグラスが空いた。

「先輩ねむいんすかあ」
先程からにこにこして黙っているだけの先輩に、隣の男が声をかける。
「んー……ちょっと」
「しっかりしてくださいよ、後ろ失礼します」
先輩を通り越してトイレに向かおうと立ち上がると、視界がぐらりと歪んだ。心臓の音が大きく響く。座っていたので気付かなかったが、思っていたよりも酔いが回っていたらしい。

「おいおい木島もかよお、お前こそしっかりしろってえ」
「……あー……悪ぃ……」
定まらない視界の中、何者かに腕を掴まれ支えられた。


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