level_11


「おーすげー、さすが男子校って感じ」
「千秋……そんな、俺らもう2年目だろ」
「そうだけど。なんつーの?やっぱこういう熱い戦いはいいよな!男くさい!汗の浮かぶ肌!貼りつく髪の毛!」
「……そうか」

体育祭当日。巨大な校舎の横、これまた無駄に広い緑成学園の校庭では、ジャージ姿の生徒が競技を行っていた。
「今年は勝てそうだな」
「玉入れすごかったもんなぁ……陽人かっこ良かったぜ」
「いやいや、それを言うなら千秋だって」
「まぁなんとか勝てた感じかな」
「嘘だろ、すごい引き離し方だったぞ」

自分の競技が終わってしまえば暇なもので、特に係もやっていない自分たちは校庭の隅でぬるいジュースを飲みながらぼんやり観戦している。5月の日差しはそれほどきつくはないが、じわじわと体を蝕んでくる。たまに吹く風が心地よい。

「そういや、鳴瀬どこ」
「え?ああ、もうすぐ借り物競走だから、待機しに行ったんじゃない?」
「あーそんなこと言ってたっけ」
「陽人、鳴瀬もちょっと……まぁ、ちょっとアレな面はあるけど、さ、悪い奴じゃないよ」
「……うん知ってる」
空気が読めなくて自分中心に考えるところを除けば――人見知りせず接してくるし、裏表のない感じで、素直だと思う。ただし、欠点の部分が大きすぎるのだ。特にこんな空間の中では、協調というものを知らない奴はひどく異質なものとして捉えられる。鳴瀬の友人は俺たちとルームメイトくらいしかいないのではないだろうか。
フェンスにもたれかかり、テントに区切られた役員席を眺める。お、あの背格好は会長かな、その隣にいるのは……副会長か。ジャージ姿で何かを話しているようだ。

「あ、借り物始まったみたい」
ひときわ目立つもさもさと黒い物体。遠くからでもわかる、奴だ。
「意外と足早いんだな」
「そうだね」
借りるものが書かれた紙を持った選手たちは思い思いに走り始める。鳴瀬が向かうのは……役員席?

「……森垣、」
視界をふさぐように、大きな体が現れた。
「あ、辻中先輩、こんにちは」
「何かご用ですか?」
「……課題のことで、担任が呼んでいた。至急来るようにと」
げっ。
この間のレポートだろうか……一応ちゃんとやったつもりだったんだけどな。


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