半宵_12
「……頭あげてください」
「木島、」
「なんか、もう何も言えないっすよ」
「……」
ちょうどいい温度になった紅茶を飲み下す。
「あの……」
「うん」
「ちなみに聞いておきたいんですけど、俺の何が良かったんですか?」
「うーん……存在?」
なんだそれ。
「俺もよくわかんないって」
「適当」
「そんなんでも、ここまでしたくなるほどなんだよ」
「へえ」
向けられる視線がなんだか再び熱をもってきた気がして、居心地の悪さに座り直す。毛足の長いマットが足をくすぐる。
「木島、そっち行っていい?」
「……やです」
顔を見たらまた流されそうな気がして、目を伏せた。時刻は夜中の二時、夜はまだ長い。
160206