ピアス_3

「柴田、大学合格おめでとう」
「ありがとう」

もともと成績のよかった柴田は、無事に一流大学に合格して、春からそこに通うことになる。
俺はというと、こちらも志望校に合格した。レベルはそこまで高くないが、いろんな学部があってなかなかにいい学校だ。
問題は、柴田の通う学校が地元より遠い圏外の学校ということだ

「寂しくなるな、とか言ってくれねーの?」
不服そうな柴田。
「いつでも電話とかメールできるだろ。数時間かければ会いに行けるし」
本当は寂しいなんて言葉じゃ言い表せないくらいに物足りない。遠距離恋愛ってこんなにつらいものだったんだな。
「小野はドライだな」
「俺だって人並みに感情はあるさ」
ただ、それを抑えているだけ。
きっと柴田は、俺が寂しいから行くなと言えば地元に留まる。信じられないくらいに俺のことを一番に考えてくれる奴だ、それくらいのことはするだろう。

「…まだ荷造り終わっていないからそろそろ帰らなきゃ」
今日が、一緒にいられる最後の日。今だって無理を言って時間をあけてもらったのだ
「…22時に出発だっけ」
「あぁ」
時計を見る柴田の左耳には十字架のピアス。もちろん俺の右耳にも同じものがついている

「送っていこうか?」
「いや、遠慮しとくわ」
「そうか」
居なくなるのを実感してほしくないという、柴田なりの気遣いなのだろう
「毎日テレビ電話するからな」
「すぐ出なかったからって、また勘違いするなよ?」
付き合いたてでお互いによくわかっていなかった頃は柴田からメールがきていても気づかないことが結構あり、意外と独占欲が強いヤツはその度に「浮気している」とか「飽きられた」とか暴走していたが、今ではむしろ可愛く思えるほどだ。
「大丈夫。……多分」
なんだか頼りない返事だな、おい。

「じゃあな」
また明日、と言いそうになるのを抑えて笑顔を作った俺に、すれ違いざまに柴田は小さく言った
「相変わらず作り笑顔が下手だな」
ああ、やっぱりバレてたか。
遠くなる背中を相手に、ぎりぎり聞こえないくらいの音量で呟く
「柴田、」
俺はここでずっと待ってるからさ、辛くなったらすぐ帰って来いよ。その代わり、くだらないことで何かを諦めたら許さねぇからな。


柴田に背を向け、今度は聞こえるように言う

「お前のごまかし方も下手だよ」

今回は特別に、声が震えてたのは言わないでおいてやろう。








本編だけで終わらせようと思っていたのに、なんだか愛情がわいて番外編まで^ω^;
柴田は微妙にヤンデレ入ってますね。独占欲とか(笑)
ヤンデレ×包容力はゴールデンコンビです((

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