「お前はまだガキだから、そういう事を言うんだ」 違う、違うよ。 私はもう、子供なんかじゃ、 今日は絶好のピクニック日和! 雲一つない空に燦々と輝く太陽!なんて素晴らしいのかしら! 白いワンピースを靡かせ私は手にあるバスケットを、 「嘘っぱち過ぎるだろそれ…」 「あ、アスベル!ちょっと勝手に人のモノローグに入んないでよね!」 「…って言われてもお前白いワンピースなんか着てないし、手に持ってるのは斧だし?しかも俺たちはピクニックじゃなくて」 「おいそこ!なにを喋っている!」 「ハッ、す、すいません教官!」 「アスベル君が邪魔してきまーす」 「ちょ、ノアル!」 教官は私とアスベルを見て、ニヤリと笑った。 うげ…やな予感…。 「……二人とも休憩抜き!向こうで魔物20体だ!」 「「ええー」」 「四の五の言うな、さっさと行け!」 うっわ、これ以上口答えすると夜ご飯抜きになりそう。それはマジ勘弁! 「はいはーいアスベル君いっこー」 「ちょ、ノアルのせいだろ!」 「モノローグに入ってくるアスベルが悪」 シュンッ 何かが私とアスベルの間を通った。 その後に木が倒れる音。 ゴクリと唾を飲んで、恐る恐る教官の方を見ると… 「お前たち……」 「い、行きます!行ってきます!ノアル!」 「失礼します!」 教官の後ろに鬼がいた。いたに決まってる。 私とアスベルは逃げるようにして教官の言った方へ走った。 *** 「よし、っと!げんかーい」 「はあ…全くお前のせいでオレまでとばっちり食らったじゃないか…」 私とアスベルは座り込むと武器を置いた。 ぽかぽか陽気。魔物の死骸に囲まれてるが空は鮮やかな青でそんなもんどうでもよくな… 「って寝るな!」 「へ…あれ…寝てた…?」 「寝かけてた。こんなとこで寝るなよ…」 「ごめんごめん。空が綺麗だなって思ってたら」 そういうとアスベルも上を向いた。 強い陽射しに若干、目を細めた。 「ソフィにも…見せてあげたかったな…」 「…ソフィ?」 「ああ。オレが、守りたかった人だ」 「ふうん…なんで過去形?」 「…もう、死んでしまったんだ」 「あ…ごめん」 上げた顔を戻すとアスベルは小さく苦笑した。 きっと、大切な人だったんだろうな。 「いや、いいんだ。まだオレは力不足で…。ソフィを失って、沢山の人を悲しませた。もうそんな事はさせない、オレは強くなって、皆を守るって、決めたんだ」 「それが、騎士になる理由?」 「それだけじゃないけどな」 アスベルにはちゃんと理由があるんだ…羨ましいな。 私は、どうして騎士になろうと思ったんだろう。 特に、意味なんて、 「別に意味なんてなくてもいいんじゃないのか?」 「え…今私何か言った?」 「いや。でもなんで騎士になったんだろうな、って顔してたから」 「…そうなの、かな」 「ああ。今急いで見つける事もないだろ。ってオレは思うけどな」 「アスベル…」 「…ていうかノアルが騎士になる理由って教官と一緒にいたいからだと思った」 「え…あ、うん!そうよ私教官の右腕になるのが夢なんだから!」 「俺の右腕になりたい奴がサボってちゃ困るよな?」 「「教官!!」」 何かに頭を掴まれたと思ったら、いつの間にか私たちの後ろには教官がいた。 …ふう、鬼はもう去ったみたい。 アスベルとほっと一安心。 「ったく…時間かかってるから心配しにきたら…恋の相談か?今日は特別に俺が受けてやっても構わんぞ」 「好きな人に相談してどうするんですか、バレバレじゃないの」 「ん?ノアル、お前は俺の対象外だから安心しろ」 「な…っ、わ、分かってる、けど…!なによ教官のばかあぁっっ!!!!」 「ノアル!」 ノアルはマリクをキッと睨むと元々の、キャンプの方へ走っていってしまった。 表情が緩んでるマリクを見てアスベルは小さくため息をついた。 「教官、表情」 「む、すまん」 「…ノアル苛めて楽しいんですか?」 「ああ、面白い」 「面白い…って、ノアル本気なのに…わっ」 ぼそっとアスベルが呟くといきなりマリクは彼の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。 何がなにやらポカンとしてるアスベルを見てマリクは小さく吹き出すと言った。 「そんなこと何年も前から把握済みだ」 「何年も…ってじゃあどうして…」 「……お前も、ノアルもまだ子供だってことだ」 「は…」 教官は、寂しそうに笑った。 [*前] | [次#] モドル |