扉は古めかしいというのに、中は真っ白に明るい。幾重のコードが伸びるガラスケースが中央に一つ。
エイルは声が出そうなのを必死に抑え、一歩一歩ガラスケースに近づき、中を覗き込む。
中には17歳ほどの少年が瞼を閉じて裸で眠っていた。瞳は見えないが、髪はピンクで外に跳ねている。肌は雪のように白い。ガラスケースの中の少年はさながら白雪姫だ。
「目もちゃんと水色だよ、気に入ったかい?」
「……ッ…」
声を出しそうになったエイルの口をサーシャは人差し指で制止た。
「俺は親だからね、喋ってもいいけど、他は駄目だ」
目が覚める。と言い、サーシャは真っ白な部屋の奥に続く扉を開け、その先へエイルを促す。
入った先は様々なモニター画面と操作機器が備えてあった。どれもこれも最新のもので驚くが、画面に映ったいろんな角度の少年に視線を奪われた。
少年の部屋から遮断されたココなら喋ってもいいと言われ、エイルは画面を見ながら口を開く。
「気に入った。アレをくれ」
「カードは使えないよ」
「わかった」
「それじゃこれにサインして」
機器の前にある椅子に座り、サーシャは一枚の紙を出した。それを受け取ったエイルは客用だと思われるソファとテーブル一式の方へ行き、スッと座って紙に書かれた文字を読む。契約書だ。
一通り読みサインをし終えると、サーシャはタッチ画面を操作した。
「これは真っ白な人形だ。エイルが最初から最後まで躾けてもいいけど、どうする?しない場合は本当に赤ん坊だからね、彼」
「……ある程度…やってくれ」
「それじゃぁ、いくつか質問するから詳しく答えてね。まずは性格だけど、どんな子をご所望かな?」
エイルは少し考えて答える。
「素直で一途がいいな」
「言語は?」
「それは俺がやる」
「身体機能は?人形は初め生まれたての赤ちゃんだから、立ったり、走ったり、トイレ行ったり…」
「トイレは自分で行けるようにしてくれ。ただし立たせたりはしなくていい…這う位がいいな」
「……ふーん…」
「…言っておくが、俺が立ち方を教えたいんだ」
「お好きにどうぞ」
ニヤニヤと笑うサーシャ。
「食事はどうする?」
「好き嫌いは無いようにしてくれ。食べ方は俺が教える」
「はいはい」
言ってタッチパネルに情報を入れていく。
「設定年齢は?」
「設定年齢?」
「彼が成長しきる年齢だよ。少年のままがいいのか、青年のままにするのか、人間と同じく歳をとらせるか。はたまた変速にするか」
「……変速にできるか?25くらいには早めになってほしい。その後は俺と同じようにとらせる」
「何年で25になったらいい?」
「2年」
「……よし、それじゃぁ。彼は素直で一途。ある程度の生活習慣はあるが、身体機能言語機能は低レベル。食材に対し拒否反応はないが無設定。2年で体は25歳まで成長する、後は自然設定っと」
「……」
「でも、2年で精神年齢までは25歳にならない。物覚えはかなりいいけど、頑張って躾けな」
「わかった」