「んっ、はあっ・・・」

情事後の気だるげな感覚に、大きく息を吐く。くたりとチェストにもたれかかって、額に浮いた汗を拭った。私に覆いかぶさるようにして、同じくチェストに両手を付いて息を整えている昴さんは、私よりも先に回復したようで。優しく私に口付けを落として体を起こした。

「・・・・・・花子さん、そのままで待っていてください」

「え・・・?」

昴さんはそのままドアを開けて出て行ってしまった。取り残される私。
まあ、いいや・・・どうせすぐにお風呂に入るんだし、もう少しこのまま余韻に浸っていよう。



花子さんのその姿は想像以上に自分に衝撃をもたらした。
情事中の熱に浮かされて私を求めるその表情や仕草や嬌声はとてもいやらしくて、愛しくて、それも私の熱を加速させるが、あれは始めて見たかもしれない。
呼吸を整えようと大きく息を吸い込むたびに揺れる胸、熱に浮かされた頬、情事後の気だるさを感じる瞳、上気した肌に良く映える白濁した液体。自身が吐き出したどろりとした欲が、肌を撫でていく。再び熱量を増した自身に戸惑うが、据え膳食わぬはなんとやら、だ。そのまま待っているようにと伝えて脱衣所を出ると、急いで避妊具を持ち出してきて彼女のところへ戻る。もともと動くつもりがなかったのか、いいつけを守っていたのかはわからないが、果たして花子さんは一歩もそこを動いてはいなかった。呼吸は整ったようだが、額に手の甲を乗せて目を閉じている。
しかし余韻を感じる胸の頂は依然立ったままだったし、上気した肌も変わらない。その肌を汚す白濁さえとろりと余計に汚しただけで、それは全て俺の熱を加速させる材料にしかならない。
変装までは解くつもりはなかったが、手早く服を脱いで変装を解き、変声機まで外し、赤井秀一の姿に戻る。俺が戻ってきた事を確認していた花子は驚いて目を見開いた。「あっ、赤井さん・・・っ!?」途端に真っ赤になる顔。もしかしたら、まともに俺の姿を見たことが無かったのかもしれない。膨張したままのそれに避妊具をつけると、花子は急に慌てた。「えっ、ちょっ・・・赤井さん・・・!私心の準・・・!」最後までは言わせない。口付けると大人しくなった花子に、俺は再度熱を突き立てた。「んんああ!!」果てたばかりの体は未だ敏感らしい。避妊具をつけていてもわかる収縮に、思わず息を漏らした。「悪いな。・・・だが50:50だ。きみにも責任はある」「えっ、なんでっ・・・」「淫らなきみが悪い」「・・・・・・!」
脱いだ服の上に置いたスカーフを拾い上げて花子の口に詰め込む。「むぐっ!」とくぐもった声を出した花子はむぐむぐと何か言いたそうだったが、その瞳の奥にゆらゆらと淫らな炎の光を見てしまったので、黙殺した。


「んんっ、んふぅ!」

こんなにも驚いた事は今までにあるだろうか。昴さんと付き合うようになってからは一度も完全な姿の赤井秀一を見る事はなかったのに。声だけとか、口調だけとか。変装を解いている間は私に顔も見せなかったこの男が、今なぜこの姿で、全裸で、私のことを組み敷いているのか。スカーフを口に詰められ、両手を軽々と彼の右手一つで拘束され、私はなす術がない。先ほどの緩慢な動きとは打って変わって、今の腰の動きは激しい。おまけに私は果てたばかりだ。乾いたばかりの額にはすぐにまた汗が伝った。絶えず嬌声は出るがスカーフに音も、唾液も吸い込まれる。唾液を吸い過ぎたスカーフは口の中で気持ち悪い存在になっていたけれど、そんなことは関係なかった。
気が遠くなるほど、何度か果てた。その度に赤井さんはうっとりと目を細めて快楽に悶えているようだった。額に浮かんだ汗が律動にあわせて降ってくる。「っく、う、ううう・・・!!!」一層激しく腰を打ち付けると、中のものが膨張した。はあ、はあとお互いの吐息だけがする。赤井さんは一度動きを止めると、ずるりとそれを引き抜く。「あう・・・」収めるものが無くなった秘所はひくひくと痙攣を繰り返して、外気に晒されたそこは再び熱を持った。疲れきって力なくぐったりとしている私を抱えて、赤井さんは浴室に入る。シャワーからお湯を出して私の体に付いた精液や汗、赤井さん自身を洗い流す。未だにぐったりとしている私は壁に背中を預けたまま赤井さんにされるがままになる。優しく胸を、腹を、太腿を撫でられて、口に詰め込まれたスカーフもずるりと引き抜かれ、その場で洗われる。その様子をぼーっと見ていた私だったが、ぎゅっと絞られたそれが再び私の口内に戻ってこようとしていたので流石に慌てた。えっ、まって、なんで?先ほどと同じような事を考えて、手で押し返そうとしたがやんわりとよけられて、それはまた口内に収まる。「・・・?」どういう意図か探ろうと赤井さんの顔を見上げると、彼はいつものポーカーフェイスだったが、見たことのない表情をしていた。その瞳の奥にぎらぎらと欲望の炎を灯していたからかもしれない。


「んんんっ」

シャワーで花子の秘所を洗ってやると、その刺激だけでイってしまったらしい。くぱ、と指でヒダを押しのけると、中は収縮していて、本能で収めるものを欲しがっている。シャワーは出しっぱなしにしておいて、俺は再びそこに自身を突き立てた。何もつけていない素肌にヒダが絡まって締め付ける。ああ、吸い付くようだ。そのまま一番敏感なところにシャワーを押し当てると、花子はより一層喘いで、中も収縮した。身を捩じらせて快楽に耐える姿はとても扇情的だ。ぷるぷると震えている胸に吸い付くと、花子は俺の肩にしがみついた。軽く律動すると爪を立てて「んんんんん!」と悲鳴を上げた。食いちぎろうとしているのではと思うほどの締め付けに、思わず歯を食いしばる。これは・・・クセになりそうだ。・・・しかし、花子はとうに限界を超えている。先ほどの悲鳴だって小さな声ではあるが浴室ではよく響く。あまり長い事こうしている事は出来ないだろう。まあ、自分に余裕がないのも確かだが。
べろりと胸の先端を舐めると、ぴくりと反応して花子が嬌声を上げた。先端を口に含んで舌で転がしながら腰を掴んで激しく打ち付けると、痙攣したように体が震えて、再度きつく締め付けられた。その快感にもう我慢できない。一番良いところでずるりと勢い良く自身を引き抜くと、太腿の上に欲を吐き出した。


「も・・・もうっ、信じられない・・・!!」

私は今までに無く憤慨していた。確かに行為そのものは良かった。優しく愛のある昴さんとの行為も、獣のように激しく求める赤井さんとの行為も・・・あああああ、思い出しちゃった恥ずかしい穴があったら入りたい・・・!!

「悪かった。だか、さっきも言ったが50:50だ。淫らなきみが悪い」「さっきも聞いたわそれ」

痛む腰とヒリヒリする秘所に、辟易しながら今度こそ突っ込みを返す。あの後動けなくなってしまった私を丁寧に洗ってくれて(ついでに自分も入浴を済ませてしまおうと思ったのだろう。自分の体も洗っていた)、のぼせるからという理由で湯船には浸からずそのまま出て丁寧に体を拭いてくれた。その頃には大分動けるようになったので服は自分で身につけて、今はソファに座って髪を乾かしてもらっているところだ。
私が赤くなった顔を隠すように両手の掌で覆っていると、やれやれ、と言った様子の赤井さんに頭を撫でられた。

「さあ、終わったぞ」

ドライヤーを片付けた赤井さんが私を再び抱き上げたので、不信感募らせた顔をして見上げると、優しい口付けをくれた赤井さんが目を細めた。

「そんな顔をするな。今夜はもうなにもしないさ。朝まで一緒に眠ろう」

そんな顔をするなって、それはこっちの台詞よ。その眼差しに初めて絆された私は、文句の言葉を飲み込んで素直に体を預けることにしたのだった。


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