「あのね花子さん、バーボンの事なんだけど」私の車に乗ったコナンくんがそう切り出した。今日は本題に入るのが早い。

「今のところ怪しいと思う人が二人居るんだけど・・・・・・」

私もFBIなのに、この子はどうしてこんなにも先に進んでいるのだろう。一体何をしたらそこまで辿り付けるのだろうか・・・。
やはり私も組織に潜った方が良いのだろうか。今の所組織と接触が無く、尚且つ自由が利き動きやすいのは私くらいだし、上手くやる自身はある。それに元々そういう役回りがこなせるようにと赤井秀一を嫌っている振りをしたり、表立ったことを一切せずモブ捜査官を演じてきたのだ。

「ねえコナンくん」

思い立ったが吉日とばかりに私の立場と使いやすさのプレゼンテーションをした。「私ならまだ身軽に動けるし、FBIを抜けた裏切り者として潜れば、それなりに優遇してもらえると思うわ。・・・例えば、ジェイムズを殺した振りをして、それを組織への手土産にすればね。私はFBI内の公式プロフィールでは組織内で唯一赤井秀一を嫌う女と言われているくらいだし、うまく立ち回れると思うわ」
私の言葉になるほど、とコナンくんは頷く。「だからジョディ先生も赤井さんも、花子さんの事に触れたがらなかったんだね」それは私の事を調べようとしていた時の話だろうか。恐らく私の事をあまり好きではなかったジョディと赤井さんは、もしかしたら私が組織の回し者だと思っていたのかもしれない。それはとんだ人狼ゲームだ。

「でも待って・・・花子さん。その考えは良いかもしれないけど、もう少し考えさせて欲しい」

未だ難しい顔をしたコナンくんは待ってと言うが、もちろん私も事を急ぐ必要はないと思っている。計画をしっかり練っておかなくては、早々にボロが出てしまったら笑えない。するりと組織に入り込んで、仄暗い穴の底から獲物を狙う蛇のように、沈黙を持って構えていなければならない。

「それに、まだその手を使うのは早いかもしれない。そのバーボンってやつ・・・被疑者の二人だけど、なんか妙なんだ」

「妙?」

「そう・・・。二人ともやけにボクに構ってくるし、危ない時に助けてもくれたし。もしかしたらバーボンは組織の中でも異例の奴なのかもしれない」

「へえ、きみの中で人物像は出来上がっているんだね・・・。それで、その被疑者は誰なのかな?」

被疑者の顔を想像しているのだろう、視線を一点に集中させて睨み付けるコナンくんは、今思えば出会った当初よりも大分フランク・・・というか、素を出すようになったと思う。他の大人たちには無邪気な子供の振りをしているが、私や昴さんなどの前ではこうして探偵の顔を出す。もしかしたら二重人格なんじゃないかと思うほどにその差は激しい。小学一年生とはまるで思えない大人びた顔と言葉にギャップを感じる。出会った当初はえらく警戒されていたけれど、今では全く警戒を見せない所を見ると、どうやら信用はしてくれたらしいが。
先ほどファーストフード店で買ったバニラシェーキを一口吸って、口の中で溶かしながらコナンくんの言葉を待った。

「一人目は蘭ねーちゃんの同級生で、最近帝丹高校に転校してきたばかりの世良真純と言う女。見た目は男みてーで、クセのある黒髪のショートヘアー。目の下に隈がある。ジークンドーと言われる格闘技の使い手で、自称女子高生探偵」

一言一句漏らさぬように聞いて、頭の中に情報を刻み込む。なんとなく想像で世良真純像を作り上げる。目の下の隈は赤井さんの目を想像した。・・・待てよ真純ってどこかで・・・。

「二人目は毛利のおじさんの弟子になった安室透という中年男性。浅黒い褐色の肌と明るい色の髪で、垂れ目の優男。ポアロと言う喫茶店でバイトしている、こちらも自称探偵」

思考を続けようと思っていた頃に二人目の情報を話されて慌てて思考をシフトする。聞き逃してはいけない。耳から入ってくる情報を叩き込むように脳に刻むと、さっき思いかけたことは既に頭から抜け落ちていた。

「ではまずそれとなく二人を探ってみましょうか。安室という男はポアロに行けば会えるとして、その世良という子にはどうやったら会えるのかしら」

「きっとポアロに居ればそのうち見かけると思うよ。蘭ねーちゃんたちと一緒に学校から帰ってきて、このお店の前を通るから」

「ふうん、」と頷いてから今後の予定を立てる。ジェイムズにも許可を取らなければならないこともあるだろう。また忙しくなるが敵さんは待ってはくれない。こちらからも攻めて行かないと。

「ボクもよくポアロに行くんだけど、お店で花子さんを見かけたら声をかけても良い?」

「ええ、そうしてくれると嬉しいわ。きっとその安室と言う人も世良と言う人も、コナンくんと仲良くしている大人の事は気になるはずだから。もし私の職業を聞かれたら、かっこいいお仕事なんだよとでも言っておいて。詳しく聞かれたら適当にはぐらかして。本人から直接私に接触することが一番望ましいわ」

「さすが花子さんだね。いつも話が早い」

「そんなこと・・・きみに言われても皮肉にしか聞こえないよ」

眼鏡を光らせて不敵に笑うコナンくんに、私は皮肉しか返せなかった。本当にどこまでも侮れない子・・・。


その後暫くは世間話をしてから月極駐車場に車を止め、二人で降りて私は工藤邸へ、コナンくんは阿笠邸へと帰ったのだった。



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