6月20日、水曜日。午前6時30分。

アラームの音で目が覚めて、スマートフォンを手に取りアラームを止める。そういう一連の動作をしていると、いつもは私よりも早く起きている彼が私の隣でもぞりと動いた。まだ眠っているらしい。・・・めずらしい。そう思って彼の頬に手を当ててみたら、少し冷たかった。「!」まさか、容態が急変したとか?焦って彼の顔を覗き込むと、すーすーと静かに寝息を立てて寝ている彼の寝顔が目に入る。顔色は悪くないし、汗などもかいていない。よかった、早とちりだ・・・。脱力してうつぶせると、「んん・・・」どうやら彼が目を覚ましたらしい。起き上がってベッドに座った。私も起き上がって座り、「おはよう」と声をかけようとしたが、掠れてしまって何を言ったのか自分でもよくわからなかった。
「・・・どうした」「・・・?」私は首をかしげる。昨日飲みすぎた所為で喉を痛めてしまったのだろうか。とりあえず水を飲もうと立ち上がると、彼に腕を引かれてベッドに逆戻りした。ばすんとベッドに尻餅をつくと、彼の手が頭に伸びてくる。反射的に目を閉じると、彼の冷たい手が額に触れた。「・・・!お前、」彼は額から手を離すと、今度は肩に手を置いて私を寝かせた。「寝ていろ」そして、自分はベッドから降りると、救急箱を手に戻ってきた。救急箱を開けて目当てのものを探すと、それを私に手渡す。

「熱を測れ」

「・・・?」

「自分で出来ねぇならやってやるが・・・」

「!」

不適な笑みを見せた彼から体温計を奪うと、私は大人しくそれを腋に挟む。ピピッという電信音が聞こえてそれを出してみると、表示板にはなんと38.4℃と表示されていた。つまり私は風邪を引いたという訳だ。

「やはり・・・熱があるな」

体温計を仕舞うと、今度は救急箱から風邪薬を出してテーブルに置いた。

「今日は休むんだな」

しかしその前に喉を何とかしなければならない。それに気が付いた彼は、台所に行くとグラスに水を注いで戻ってきた。私は受け取ると中身を飲み干して堰をする。

「あー・・・声はなんとか出るみたい」

「しかしひでぇ声だ」

「仕方ないでしょ」

時計を確認するとまだ7時にもなっていない。どうせ今電話したところで誰も出ないだろう。7時10分を過ぎれば部長が来るはずだから、時間を見計らって電話することにしよう。その前にご飯を食べて薬を飲まないと。そう思っていると、すでに彼が台所に向かって何かやっていた。新しい鍋を出す音とコンロで火にかける音が聞こえてくる。何か作ってくれているようだ。出来るまで寝ていようと目を閉じると、思ったより簡単に私は意識を手放した。


「起きろ」

その声で目を覚ました私は、ゆるゆると目を開けて体を起こし、ベッドに座る。手が届くようにベッドに寄せられたローテーブルにはご飯を味噌汁に入れて煮込んだものと漬物とお茶が置いてあった。「早く食って薬を飲め」「ありがとう・・・」私は頂きますをしてレンゲを手に取ると、猫飯を掬って口に入れる。お米に味噌汁が染み込んでいて美味しい。私が大人しく食べ始めた事を確認した彼は、自分用に用意したハムエッグをつつき始めた。

ゆっくり食べて、薬を飲むと、私はスマートフォンを手に取った。時間を確認すればもう7時10分を過ぎている。会社に電話してみると、やはり電話に出たのは部長だった。そう言えば数日前にも同じ事を思ったなと思いながら「おはようございます。七市野です」と名乗る。「七市野さん?大丈夫かね、その声」「ええ・・・どうやら風邪を引いてしまったようで。少し熱が高いので今日は大事を取ってお休みを頂きたいのですが・・・」「構わんよ。ゆっくり休んでくれ。最近は風邪が流行っているようだし、どこかから拾ったのかもしれないね。ではお大事に」「ありがとうございます。では、失礼します」電話を切ると、隣で会話を聞いていた彼がベッドを顎でしゃくった。「交渉成立のようだな。ではすぐに寝てしまえ」「そうするわ」二度寝までして良く眠っていた私はあまり眠気を感じていなかったが、横になって目を閉じると、いつの間にか眠ってしまっていた。


「・・・ん、」

それからどれくらい時間がたっただろうか。不意に私は目を覚ました。時計を見て、私が3時間ほど眠っていた事を知った。汗をかいたのか、体がべたついていたので、着替えがしたいと思って起き上がると、気が付いた彼に「どうした」と言われた。

「着替えたい」

「そうか」

彼はスマートフォンを弄っていた手を止めてそれをテーブルの上に置くと、私に手を貸そうと立ち上がった。そんな、肩を貸してもらうほどふらふらしてはいないわよと私は笑って着替えを取って脱衣所に向かった。服を脱いで、そう言えば今日は天気がいいから洗濯もしておかないとと思って洗濯機に服を入れる。洗剤と柔軟剤を入れてスイッチを押すと、私は濡らしたタオルで体を拭いてから着替えた。随分とすっきりする。台所に向かってお茶を飲むと、「寝なくていいのか」と声をかけられた。「そんなに寝てたら夜眠れなくなるわ」と言うと、「確かに」と納得したようだった。

「ただでさえ今日はもう充分寝てるって言うのに」

「汗をかけばまた眠くなるだろう」

そう言って「来い」と続けた彼に従って彼の隣に座ると、彼は私の肩に手を置いた。そのまま倒される。

「何・・・?」

問いかけの答えはキスで返された。優しく吸われる唇に意識を集中させていると、いつの間にか服の中に手が侵入していた。

「んんっ」

抗議の声を上げたが、全く気にしていない様子の彼は止まることなく行為を続けた。ゆっくり、しかしいやらしく嬲る唇と、下着の奥を弄る手。息を吐くために口を開けると、舌を押し入れられた。「ん・・・ふぅ」吐いた息を全て奪われ、いやらしい水音が鼓膜を震わす。「んっ」胸を撫でていた指が頂を掠めると、私は思わず声をあげた。きゅうっと子宮が疼く。思わず脚を閉じて太腿を擦り合わせると、彼はまた胸の頂に指を這わせた。「ん、あっ」長い口付けが終わる頃には、すっかり絆されてしまっていた。もう既に抵抗する気力は持ち合わせていない。何も言わない私を見て“合意”だと受け取った彼は、今度は私の首筋に唇を寄せた。先ほどまで私の口内を犯していた舌が今度は首筋を舐め上げる。
ぞくぞくする快感に身悶えて彼の服を握る。彼は一度喉の奥で笑うと、私の服と下着をたくし上げて肌蹴させた。片方の胸を手で弄りながら、もう片方の胸の頂を口に含まれ、私は悲鳴を上げそうになった。ビリビリと背筋に快感が走る。下腹部には体液が溢れる感覚がした。
焦らす様に優しく指先で胸を撫でられて私は息を吐く。「はぁ・・・あぁ・・・」絶えず溢れる体液と、納めるものが欲しくてきゅうきゅうと収縮するそこに、私は早く触れて欲しくて彼の目を見つめた。私の表情を伺っていた彼は、私と目が合うとふっと笑みを浮かべて、胸を強く吸った。「ひゃあぁ!」同時に指で頂を強めに摘まれると、それだけで達してしまった。悲鳴に似た嬌声を上げると、肩で息をする。彼は今度は反対側の胸に舌を這わせ、両手で体のラインをなぞった。どうやら焦らすだけ焦らすつもりらしい。「あっ、ん・・・ふあっ」彼の舌の動きに合わせて出てしまう嬌声を聞きたくなくて唇を噛むと、それに気が付いた彼に口をこじ開けられた。そのまま指を二本突っ込まれて、私はもう口を閉じられなくなる。行き場の無い熱に浮かされて瞳に涙を滲ませると、彼の下半身が太腿に押し付けられた。明らかに存在を主張して硬くなっているそれにドキリとする。彼は腰を動かして私の太腿にそれを擦りつけながら胸を吸うと、少しだけ歯を立てた。「ふぁあん!」私はまたしても悲鳴を上げて達すると、目から涙が零れた。
彼はやっと唇を離すと、「そんなに厭らしい目で見つめて・・・何をして欲しい?」と囁いた。私は羞恥で顔に熱が集中するのを感じながら、「うう・・・そっちだけじゃなくて、下も、気持ちよくして・・・」と何とか声を絞り出した。太腿に押し付けられた性器がびくびくと脈打つのがわかった。「上出来だ・・・花子」と、初めて彼が私の名前を口に出し、私のズボンと下着を脱がせた。濡れるそこを見て笑みを濃くする彼に、「やだ・・・そんなに見ないで」と言うが、そこはお構い無しに体液を分泌し続ける。「そんな事を言って・・・体は正直なんだがな」「ううう」思わず目を瞑ると、衣擦れの音がした。彼がズボンを脱いでいる音だろうか。それを想像したらきゅうと下の口が締まった。つ、と穴に宛がわれて、「あっ」と私は声をあげる。

「あっ、あっ、ああっ」

「くっ・・・少し力を抜け・・・キツ過ぎる」

狭い中に無理やりそれを押し込まれて、私は息が詰まった。「息を吐け。ゆっくり・・・」彼の言う通りにゆっくり息を吐く「そうだ・・・いい子だ」と、一気に突き上げられた。「ひゃあああん!」「くうっ」またしても達してしまった私は遠慮なく彼の性器を締め上げる。それを受けた彼が苦しそうに息を吐く。「動くぞ・・・」「ああっ、だめぇ、今、イったばっか・・・!ああん!」抗議の声をあげるが強く突き上げられて、私は悲鳴を上げるしかなかった。快楽に耐えかねて彼の背中に爪を立てると、低く笑った彼に口付けをされた。徐々に律動が早くなって私が息を上げると、首筋に舌を這わせた。「――!」そして、敏感になっていた私が何度目かの絶頂を迎えたとき、彼のモノが引き抜かれてお腹の上で欲を吐き出した。
お風呂に入ろうと思い脱衣所に入った時、いつの間にか止まっていた洗濯機が時間の経過を感じさせ、気恥ずかしくなって私は暫く彼の顔が見れなかった。


彼への気持ちに蓋をした午後12時20分。


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