わたしがセブルスから唇を離すと、見開いていた目は閉じていた。隣でハリーが声をあげて泣き出し、ハーマイオニーもロンに抱きついて嗚咽を漏らしていた。抱きつかれているロンも涙と鼻水で顔がくしゃくしゃになっていた。三人をチラリと見て、もう一度セブルスに視線を戻す。ファーストキスだったのに、血の味だなんて。と少し憤慨した。

「・・・ハリー、」わたしがハリーを呼ぶと、ハリーはしゃっくりを堪えながら「なんだい?」と優しい声で答えた。

「戦いはどうなったの?ヴォルデモートは?」

わたしはセブルスから目を離さずに囁いた。ハリーは少し時間を空けて(おそらく深呼吸していた)「今から決着を付けに行くところさ」と強く言った。

「じゃあ早く行かなきゃ。泣いてる場合じゃないわよ」わたしはそう言って初めてハリーの目を見つめた。この目はセブルスが愛したリリーの目。このエメラルドグリーンはこんな風に涙に濡れていてはいけない。強い光を持って先を見つめなければいけない。「男の子なんだから、しっかりしなさい」「僕は母さんの事を知らないけど、きっと今ここに母さんがいたら君とおんなじことを言うと思う。なんだかよくわからないけど、今そう思った。・・・ありがとう、花子。それからスネイプのこと・・・ごめん」「あなたが謝る必要はないわ。・・・そうでしょ?」「ごめん。・・・えっと、行ってきます」ハリーはがしがしと乱暴に涙を拭って走っていった。ロンとハーマイオニーもその後に続いて走っていく。ハーマイオニーはチラチラとこちらを振り返っていたけれど、今は一人にしてくれる気になったようで、最後にはロンよりも早く走っていた。

誰もいなくなった部屋で、未だにわたしは動くことができず、セブルスの隣に座って彼を力いっぱい抱きしめた。

「言い逃げなんてずるいよ・・・セブルス。わたしも、愛してる」

望んでいた未来は来なかった。ああ、神様。もし神様がいるとしたら、なぜセブルスだけ愛してくれないのか。


もっと深い悲しみに襲われるかと思っていたのに、わたしの心はぽっかりと穴があいたようで。わたしはもう一度セブルスの唇に口付けを落とすと、彼の手を握って肩に頭を預けた。このまま二度と目が覚めなければどれだけ幸せなんだろう。








不意に目が覚めた。随分と長い間眠っていたようだ。夢を見ていた気がする。長い長い夢を。なんだったかは思い出せないけれど、良い夢だったような、悪い夢だったような・・・。
白い天井に目が眩んで瞬きをする。ここはどこだろう。

「・・・・・・花子!」

聞きなれた声が聞こえたので目を向けると、ムーニーが泣きながら駆け寄ってきた。泣いてるけど、嬉しそうだ。

「気分はどうだい?大丈夫?」

「ええ・・・少し喉が渇いてるくらいね。ムーニーは何か良い事があったの?お子さんが生まれたとか?」

「っ、このおばかさん!今は君の事が一番大事だ!隣を見てごらん」

ムーニーがわたしの背中に手を回して上体を起こすのを手伝ってくれて、隣を見るように促した。隣のベッドでは誰か眠っているようで、上下する膨らみと静かな寝息が見え、聞こえた。

「・・・・・・!!!」

わたしは咄嗟に立ち上がって、失敗して、隣のベッドに飛び込んでしまった。スプリングがギシギシと音を立てて、ベッドが大げさに揺れる。わたしは目の前にある顔を見て、泣きそうになった。

「セブルス!!生きてるの!?どうして?」

感極まって思いっきりセブルスを抱きしめると、真下から「うう・・・」と呻き声が聞こえて、次いで「私にもわからん」と無理やり搾り出すような声が聞こえた。

「花子!セブルスも目が覚めたのか!良かった・・・!!ハリーからセブルスが死んだと聞いていたが、駆けつけてみれば息はあったし・・・一体何がどうしてこうなったのか、私にもよくわからないけど本当に良かった!ああ、早くハリーたちにも知らせないと!ドーラ!ドーラはどこだ!?」

ムーニーは騒がしく喚くと大慌てで部屋を出て行ってしまった。セブルスが「全く・・・いくつになっても騒がしい奴だ」と悪態をつく。わたしはまた開きかけたその唇に口付けて、動きを止める。

「全く、本当に信じられない。あなたって人は・・・!・・・・・・愛してる」

「君の想いはあの時ちゃんと聞こえていた。・・・私も、愛している」

わたしが腕の力を緩めると、セブルスはわたしの背中に片手を回して、もう片方の手を後頭部に添え、優しい優しい口付けをくれたのだった。




end


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